MANUAL

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第1章では、気候予測データセット2022の全体像のほか、各データセットについて全般的に関連する内容を記載する。
第1章における用語の解説は「(10)用語説明」を、 各データセットの詳細は第2章を参照されたい。

令和4年12月公開
令和6年3月改訂



(1)気候予測とは

① 気候予測

 日々の天気予報と21世紀末等を対象に行われる気候予測は、ともに数値予報モデルを用いるという点では同じであるものの、その手法、予測の考え方が異なっている。 日々の天気予報では、世界中で収集された観測データをもとに大気の初期状態(初期値)を推定し、その初期値から物理法則に基づいて数値予報モデルにより時間積分を行い、 特定の日時等を対象に将来予測を行う(決定論的予測)。ただし、大気にはカオス的な性質があり、初期値に含まれる誤差や数値予報モデル自体の不完全性に伴う誤差等が 予測計算の中で急速に増大してしまうため、現在の技術では数週間程度先までが決定論的予測の限界とされている。日々の天気予報のような決定論的予測ではなく、 季節予報の「ある地方における月平均気温が平年と比べて高くなる可能性が40%」のような、ある程度の空間的広がりを持った領域を対象に大まかな天候を予測するという形であれば、 陸や海洋等の長周期の変動等を頼りにしてより遠い将来までの予測が可能とはなるものの、そうした陸や海洋等の変動(自然変動)も21世紀末まで正確に予測することはやはり不可能である。 このため気候予測においては、例えば、ある場所における2080年1月1日の天気等を対象とした予測ではなく、ある地域の時間的に平均的な大気等の状態(気候)を対象に、 将来の気候状態が現在の気候状態からどの程度変化するのかをシミュレーションすることによって“予測”が行われる。 この中では、前述の自然変動は正確な予測ができないことからノイズとして扱われ、気候状態に影響を与えることが分かっている二酸化炭素等の温室効果ガス等の強制に対し、 地球の大気、陸面、海洋、生態系等から構成される気候システムがどのように応答するのかという点に着目して予測が行われる。 特に、二酸化炭素等の温室効果ガス濃度や土地利用等は、人間の社会経済活動の影響を受けるものであり、長期間の予測はできないことから、 将来の考えられる社会経済活動に基づいてシナリオが作成され、気候予測に使われる数値予報モデル(気候モデル、以下、全球を対象としたものを全球モデル、 日本域等の特定領域を対象としたものを領域モデルと書く)に与えられる。とはいえ、もちろんシナリオには不確実性が含まれ、予測に用いる気候モデル自体も完全なものではないため、 不確実性をもたらす大きな要因となる。このような不確実性を適切に評価するため、想定される様々な状況下で予測を複数行い(アンサンブル予測)、 その結果を総合的に評価する試みや、異なる気候モデルを用いた複数の予測結果によって予測全体を評価する(モデルアンサンブル)等の工夫が行われる。
 以上のように、気候予測は普段目にするような日々の天気予報とは手法や対象が異なっており、様々な不確実性を含むものであるため、予測データの利用にあたっては、 予測データの特徴、不確実性等を適切に把握したうえで使用することが望ましい。気候予測に関するより詳しい解説は、 『気候変動適応技術の社会実装ガイドブック』 (SI-CATガイドブック編集委員会, 2020)第2部にまとめられているので、適宜参照されたい。

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② 気候予測データセット社会実装の全体像

 気候予測データセット2022は、気温、降水量、日射量、風速、海水温等の物理要素について、気候モデルにより現在気候を再現、 または21世紀末にかけての将来予測を行って得られたデータである。 農業や水産業、生態系、自然災害、健康、産業・経済活動等の各分野における気候変動の影響評価には、 これらのデータをそのまま活用できる場合もあるものの、多くはこれらのデータをインプットとした各分野の影響評価モデルによって、 作物の収量や栽培適地、土砂や洪水災害、感染症等、より具体的な影響変数に変換され、各分野に対する気候変動の影響評価が行われる。 こうした影響評価結果に基づき、各分野において具体的にどのような適応策を実施すればよいかの検討が行われる。 一部ではさらに、より具体的な判断材料として、気候変動による損失額等の経済的な評価が行われ、 その結果をもとに具体的な適応策の検討が行われる。 以上のような気候予測データが気候変動適応策の検討等への社会実装につながるまでの全体像(概要)を 資料1に示す。

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(2)気候予測データセット2022の概要

 「気候予測データセット2022」(以降、データセット2022という)は、 文部科学省が実施した気候変動研究プログラム( 気候変動リスク情報創生プログラム(創生プログラム)や 気候変動適応社会実装プログラム(SI-CAT)、 統合的気候モデル高度化研究プログラム(統合プログラム)、 気候変動予測先端研究プログラム(先端プログラム) 等)の成果として創出された気候変動予測データや、それらを含む予測データを大学や研究機関等が解析、 統計処理して作成されたデータから構成され、一つのパッケージとして提供するものである。 データセット2022は表2.1に示す16のデータセットから構成され(⑯は令和6年3月に追加)、 後述するダウンスケーリング(データの高解像度化)手法の違いや、 予測変数が主に大気または海洋関連のものと3種類に大別される。 さらに大気関連の予測データについては、実験の種類の違いにより、 タイムスライス実験(現在と21世紀末について各々20年間程度の期間で区切って計算したもの)、 連続実験(現在から21世紀末まで連続的に計算したもの)、 d4PDFシリーズ(全球地表気温が4℃等一定に上昇した条件下で多数のアンサンブル計算を行ったもの)の3種類に分類される。

表2.1
大気予測(力学的ダウンスケーリング)
No. データセット名
全球及び日本域気候予測データ
日本域気候予測データ
マルチシナリオ・マルチ物理予測データ
全球及び日本域150年連続実験データ
全球及び日本域確率的気候予測データ(d4PDFシリーズ)
北海道域d4PDFダウンスケーリングデータ
本州域d4PDFダウンスケーリングデータ
日本域台風予測データ
全球d4PDF台風トラックデータ
日本域d4PDF低気圧データ
全国版d4PDFダウンスケーリングデータ(※令和6年3月に追加)
大気予測(統計的ダウンスケーリング)
日本域農研機構データ(NARO2017)
日本域CMIP5データ(NIES2019)
日本域CMIP6データ(NIES2020)
海洋予測(力学的ダウンスケーリング)
日本域海洋予測データ
全球及び日本域波浪予測データ

各データセットの関係性を概観した図は資料2、 各データセットで使用されている領域モデルや排出シナリオ、空間・時間解像度、メンバ数、 主な変数等を示した一覧表は資料3の通りである。 より詳細な情報や利用上の注意事項等については、第2章の各データセット解説書を参照されたい。

① 気候予測データセット2022利用にあたっての全般的な注意事項

 本データセットの利用にあたっての全般的な注意事項を以下に示す。これらの全般的な注意事項に留意しつつ、 各データセット特有の注意事項も参考にしながら、データの利用を行うことが望ましい。

● データセット2022を構成する各データの仕様は異なる

 前述の通り、データセット2022の各データは一つの事業で統一的に作成されたものではない。 このため、資料3の「気候予測データセット2022カタログ(詳細)」に示す通り、 各データセット作成における実験設定(領域モデル、排出シナリオ等)や、データの時間・空間解像度、メンバ数、バイアス補正の有無、 ファイル形式等は各々異なることに注意が必要である。 なお、大気予測(力学的ダウンスケーリング)のデータのうち、①「全球及び日本域気候予測データ」、③「マルチシナリオ・マルチ物理予測データ」、 ④「全球及び日本域150年連続実験データ」、⑤「全球及び日本域確率的気候予測データ(d4PDFシリーズ)」については、各々の予測結果の違いを 「(8)モデル実験の比較」で解説しているため、適宜参照されたい。

● データセット2022は主に第5期結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP5)ベースの予測である

 データセット2022は、全球モデルによる予測データを日本域にダウンスケーリングしたデータで主に構成されているが、 当該全球モデルはCMIP5に参加したものが使用されている(⑬を除く)。 2021年夏に公表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書第1作業部会報告書(AR6 WG1)では、 第6期結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP6)に参加した全球モデルによる研究結果が使用されており、 最新のモデルはCMIP6参加モデルとなることから、データセット2022は一世代前の全球モデルをベースとしていることに留意されたい。 これは、ダウンスケーリングデータの作成には一定の時間がかかるためである。加えて、CMIP5/6では、使用されている温室効果ガスの排出シナリオ等も異なる。 このため、CMIP5/6参加モデルの全般的な特徴や予測傾向の違い、排出シナリオの違い等を 「(5)CMIP5とCMIP6の関係性(AR5とAR6、コアシナリオ等)」で解説するとともに、データセット2022のうち、 ①「全球及び日本域気候予測データ」、③「マルチシナリオ・マルチ物理予測データ」、④「全球及び日本域150年連続実験データ」、 ⑤「全球及び日本域確率的気候予測データ(d4PDFシリーズ)」については、「(8)モデル実験の比較」で予測結果が CMIP6参加モデルによる予測とどう異なるかを比較しているため、適宜参照されたい。

● 気候モデルによる計算結果にはバイアスが含まれる

 気候モデルは、大気、海洋、陸面等の挙動を物理法則に従ってプログラム上で表現したものであるが、利用可能な計算機資源とそれに応じたモデルの解像度の限界等、 様々な制約があることから現実の運動を完全に表現できるものではなく、気候モデルを使用した計算結果には、 そのモデル特有の系統的な誤差(バイアス。例えば、日本列島の日本海側では冬季に多量の降雪があるが、その降雪量が現実よりも少なく表現される等)が含まれる。 バイアスの大きさは気象要素、場所、季節等によって異なるが、バイアスがあまりにも大きい場合は、当該モデルの再現性が低いと考えられることから、 そのモデルを、バイアスを除去せずに使用して将来予測を行うことは適切ではない。 バイアスが大きくない場合には、当該モデルによる将来予測結果と現在気候再現結果の差分をとることで将来予測することが一般的に行われる。 ここでは、同じモデルでは現在も将来も同様のバイアスが生じると見なし、両者の差分をとることでバイアスの影響を除去できるという考えに基づいている。 他方で、将来予測においてある閾値を超えるかどうか等に着目する場合には、こうした手法をとることができないため、バイアス補正を行う必要が出てくる。 より具体的に、バイアス補正がどのような場合に必要となるのか、またどのような種類があるのか等は、 「(6)バイアス補正について」で解説しているので、適宜参照されたい。

● 細かい地域や特定の年代の将来予測は不確実性が大きくなる

 前述の通り、気候モデルは現実の大気・海洋の挙動を完全に表現できるものではない。 一般的に、気候モデルで再現できる現象のスケールは、モデルの水平解像度の数倍以上のものである。 また、日本域には急峻な山岳や細かい海岸地形が多数存在し、ローカルな気候変動には大きく影響すると考えられるが、 これらはある程度簡略化されて気候モデルに組み込まれている。 加えてローカルな気候の変化には、長期間の変動予測が困難なエルニーニョ・ラニーニャ現象等の大気・海洋における自然変動の影響が現れやすい。 このようなことから、ローカルな将来予測には依然として大きな不確実性が伴っていることに注意が必要であり、 特定の地点(格子点)の結果に着目するのではなく、ある程度の広がりを持つ領域に対して評価を行うことが望ましい。 また、気候予測データには気候変動に伴ってゆっくり変化するトレンド的な成分だけではなく、自然変動の成分が加わっていることにも注意が必要である。 このため、数年等の特定の期間だけを対象に評価することは適切ではない場合があり、十数年程度等、 ある程度の幅を持たせた期間の平均や積算等の統計値を対象に評価を行うことが望ましい。

● 使用されているシナリオにより将来予測結果は異なる

 気候モデルを用いた気候変動予測には、気候変動に影響を及ぼす将来の温室効果ガス排出量・濃度、エアロゾル排出量、土地利用等の情報が必要であるが、 これらは人間活動の影響を受けて変化するものであり長期にわたる予測はできない。 従って、これらは様々な想定に基づく社会経済シナリオとして気候モデルに与えられている。データセット2022を構成するデータは、 代表的濃度経路(Representative Concentration Pathways: RCP)のうちRCP2.6、4.5、6.0、8.5等、 様々な温室効果ガス排出シナリオに基づいて将来予測が行われており、各々のシナリオによって将来予測結果は異なる。 シナリオの詳細は「(5)CMIP5とCMIP6の関係性(AR5とAR6、コアシナリオ等)」に記載しているので、適宜参照されたい。

● 用途に応じて適切なデータセットを利用することが重要である

 データセット2022は、資料3のカタログに示す通り、異なるダウンスケーリング手法により作成されたデータセットから構成される。 各手法で作成されたデータ利用上の一般的な注意点は「(3)力学的ダウンスケーリングと統計的ダウンスケーリングについて」に記載しているが、 例えば統計的ダウンスケーリングによるデータは、過去の観測値を用いた統計的関係性を用いて将来予測データが作成されているため、 過去に発生したことのない極端な現象等の再現は不十分なことが想定され、防災を目的とした利用には向かない等の特徴があることに注意が必要である。 また、力学的ダウンスケーリングによるデータでも、データ創出に用いたモデルの解像度によって再現できる気象現象とできない気象現象があるため、 着目する気象現象が再現されているかどうかに留意したうえでデータセットを選択することが重要である (詳細は「(4)モデル解像度とデータセットの利活用の関係」に記載しているので、適宜参照されたい)。

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(3)力学的ダウンスケーリングと統計的ダウンスケーリングについて

① 概要

 気候変動予測に使用する全球モデルの多くは、水平解像度は100km単位のメッシュ(格子点間隔)であり、全球モデルから得られる予測データでは、 温暖化時の国内各地域やより細かいスケール等の気候を調べるには不十分である。 このため、全球モデル等から得られる予測データから、より細かいスケールを解像できる水平解像度が数十~数kmメッシュ程度の高解像度予測データを 得る方法が「ダウンスケーリング」と呼ばれる。 ダウンスケーリングを行う方法は、力学的ダウンスケーリング(力学的DS)と、統計的ダウンスケーリング(統計的DS)の2種類に大別される。 各々について、方法、メリット・デメリット、用途、利用上の留意事項を表3.1に示す。

表3.1
力学的DS 統計的DS
方法
  • 領域モデルを用いて、全球モデル等による予測を高解像度化する手法
  • 過去の観測データから求められた統計的関係を用いて、全球モデル等による予測を高解像度化する手法
メリット
  • 地形や土地利用等を考慮した小規模スケールの現象を再現することに適している
  • 得られる物理量の格子間の整合性が担保される
  • 観測データが十分でない要素・地域でも利用が可能であることが期待できる
  • 計算負荷が小さく、多数のシナリオや長期間・広領域を対象に実行することに適している
  • 計算負荷が小さく、高解像度データを作成するうえでも有効
デメリット
  • 計算負荷が大きく、多数のシナリオや長期間・広領域を対象に実行することには適していない
  • 高解像度データの作成には、ダウンスケールに使用する領域モデルの解像度を上げる必要があり、計算負荷が大きくなる
  • ダウンスケーリングしたデータにはバイアスを伴うことがある
  • 全球モデルで再現できていない小規模スケールの現象は再現されない
  • 得られる物理量の格子間の整合性が担保されない
  • 過去にまれにしか観測されていない極端現象の表現には向かない
  • 統計処理に必要となる十分な観測データが必要
用途
  • 防災分野を含む幅広い分野での利用が可能
  • 幅広い分野での利用が可能であるが、防災分野での利用に向いていない
利用上の
留意事項
  • バイアス補正が必要な場合がある
  • 計算領域の境界付近のデータは使わない方が良い
  • 過去の観測データから求められた統計的関係が将来予測にも適用可能とは限らない点に注意が必要

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② 力学的ダウンスケーリング(力学的DS)

 力学的DSは、領域モデルにより全球モデル等による予測を高解像度化する手法である。 具体的には、領域モデルの境界条件に全球モデル等の情報を与えることにより、全球モデル等から大規模な気象場の情報を受け取り、 対象とする領域内の現象を表現することで、より解像度の高い予測データを作成する。 対象領域内の物理的なプロセスは、領域モデルによって物理的に細かく計算されるため、 解像度の粗い全球モデルでは表現できないような地形性降雨や局地的な現象を再現することが可能となる。 例えば、ダウンスケーリングの元データとなる全球モデルの一格子(100km程度)で降水が発生していた場合、力学的DSであれば、 その格子内の地形等による物理的な効果が考慮されることで、より適切な降水分布が表現されることを期待できる(統計的DSの場合、 その手法によっては、本来は不自然な場合であっても、解像度が数kmになったDS後のデータにおいても100km四方全体で同時に雨が降るようなことが起こりうる)。 また、常に物理法則が成り立つ領域モデルによってデータが作成されるため、格子間の物理的整合性が担保される。 加えて、通常あまり観測されないような要素もモデル内では計算されるため、より多くの要素・地域で利用が可能であることが期待できるメリットもある。 例えば、山岳域の積雪や、地域気象観測システム(アメダス)の観測所によっては観測されていない湿度などの要素についても、 力学的DSによってその分布を得ることができる。
 力学的DSには以上のようなメリットがある一方で、高解像度な領域モデルによる計算を必要とすることから、多大な計算機資源を必要とするデメリットがある。 具体的には、使用するモデルの水平解像度を倍にするだけでも、計算量は8倍程度膨れ上がるため、容易に高解像度化を行うことは難しい。 このため、多数のシナリオや長期間・広領域を対象に力学的DSを実行することは困難であり、領域や計算期間、排出シナリオ数を絞って行われることが一般的である。
 また、力学的DSでは領域モデルを用いてデータの高解像度化が行われるが、領域モデルは現実の大気・海洋の運動を完全に表現できるものではなく、 その計算結果にはバイアスが含まれる。 従って、力学的DSの予測結果を使う場合には、必要に応じてバイアス補正を行う等、バイアスの影響を除去したうえで将来予測の結果を評価する必要があることに 注意が必要である(バイアス補正の詳細は「(6)バイアス補正について」参照)。 また、領域モデルによる計算領域の縁付近のデータは、領域モデルより低解像度の全球モデルに強く影響され、細かい現象を正しく表現できていないため、 使用するべきではない(なお、データによっては、こうした領域を除いて提供されていることもあるため、確認が必要である)。
 力学的DSのより詳細な解説は、稲津と佐藤(2010)や、高薮と金光(2010)等を適宜参照されたい。
 以上のような力学的DSで得られる予測データは、モデルを用いて物理法則に基づいて計算された結果であることから、 後述する過去データを用いた統計的関係を利用する統計的DSと違い、集中豪雨のような稀にしか起こらない現象の表現もできるため、 農業、林業、水産業、工業、健康、防災分野等をはじめ、全ての分野で利用することができる。 風水害リスク評価等、防災分野での活用例については「(7)利用例(主なもの)」に記載しているので、 適宜参照されたい。また、農林水産業、水資源・水環境、森林生態系、観光業等への利活用事例については、 『「日本の気候変動2020」 (詳細版)』 (文部科学省・気象庁, 2020)付録3.3等にまとめられている。
 続いて、力学的DSデータの一種である地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース(d4PDF)等について解説する。

ⅰ)d4PDF

 d4PDFは、過去気候、3つの温暖化レベル(結果として+1.5℃、+2℃、+4℃昇温するレベル)の将来気候、そして温暖化していないことを想定した非温暖化過去気候のそれぞれについて実施した、 全球域(60kmメッシュ)と日本域(20kmメッシュ)の高解像度大気モデルによる大規模アンサンブル気候シミュレーション出力をまとめたデータベースの総称である(日本域は全球域から力学的DSしたもの)。 3つの温暖化レベル実験は、d1.5PDF、d2PDF、d4PDFなどと参照されることもある。 本データベースが作成される以前は、各地域や各セクターの間で異なる気候変動予測データが使われ、相互に一貫性のない気候変動対策が採られてしまうという危惧があった。 こうした背景の中で、標準的なデータセットの作成により、近接する地域間や各種産業、行政などのセクター間で整合する国内の気候変動影響評価と、 これに基づく気候変動対策が実現可能となることを目標に掲げて d4PDF は開発された。 とりわけ、社会的関心の高い豪雨や台風などの発現頻度が低い顕著な大気現象の将来変化を評価・推定することに重点を置いて設計されたデータベースとなっている。
 メリットは、3000年から6000年分の各気候シミュレーション出力から、調査対象とする気象要素や台風、豪雨などの顕著イベントについての実験サンプルを多数抽出して統計処理することで、 過去気候と複数の温暖化レベルの将来気候に対する気候変動の影響についての統計的に信頼性の高い解析結果が得られることである。 特に、d4PDFの将来気候実験(全球)データは、単一の気候モデルによる予測であるものの、CMIP5(詳細は「(5)CMIP5とCMIP6の関係性(AR5とAR6、コアシナリオ等)」参照)に 参加した6つのモデルによる予測から作成した複数の海面水温(SST)将来変化分布を与えることで、気候モデル自体に起因する地域スケールの不確実性をある程度表現していると考えられる。 SSTの将来変化に加えて、自然変動の不確実性に基づく摂動を与えた実験をあわせて実施して大規模アンサンブルが構成されていることから、自然変動に起因する予測の不確実性と 気候モデル自体に起因する予測の不確実性を分離して統計解析を行うことができる。 また、水文、農業、経済などの様々な分野の影響評価モデルに、力学的ダウンスケーリングによる物理的に整合する大気要素を入力することで、 例えば洪水発生など社会活動に関係する事象についての気候変動影響評価やリスク評価が可能となる。
 デメリットは、データ量が膨大なため、利用にあたっては、十分な計算機関連資源を確保しなければならないことである。 参照頻度の高い気象要素について抜き出してコンパクトにしたデータ (気候変動適応技術社会実装プログラムSI-CAT気候実験データベースシステム:SEAL等)が用意されているので、 こうしたデータの活用も検討されたい。 また、日本域のようにローカルな気候変動に着目する場合には、海洋変動を含めた気候学的知見が不足していることや、 モデルの不完全さに起因する予測の不確実性が出力に十分に反映されていないことに注意が必要である。 例えば、国内の日最高気温が将来最大何℃まで上昇するかを知るためにデータセットから直接値を読み取る場合、過去気候における同地域での気温が適切に再現されているかや、 将来の海洋変化は適切かなどについての検討が必要である。
 d4PDF は、大気変動や気候変動メカニズム解明等の学術的研究はもとより、気候変動影響評価とそれを踏まえた適応策の検討に活用され、科学的研究成果を社会実装した好例として高い評価を得ている。 データベースの詳細解説及びd4PDFを利用した研究や社会実装の多数の実例は別途報告(石井と森, 2022)にまとめられているので、適宜参照されたい。

図3.1

図3.1

図3.1 d4PDF 全球大気モデル実験により再現された過去(PAST)、非温暖化(NON-WARMING)、+1.5℃、+2℃、+4℃ の将来のそれぞれの気候状態における全球平均地表面気温偏差の時系列。 地上気温偏差は、ベースライン1991~2010年の平均からの偏差、陰影は実験間のばらつきを表す。 d1.5PDF 実験は他と比べて短期間となっている。凡例の括弧内の数字は各実験のシミュレーション数(メンバ数)である。 黒線は、SST将来変化分布の作成に使用した6個のCMIP5モデルによる過去再現と将来予測結果。

ⅱ)150年連続実験

 150年連続実験は、20世紀中頃から21世紀末までの連続した実験で、d4PDFと同じ全球モデル(60kmメッシュ)から日本域モデル(20kmメッシュ)へ力学的DSを行っている。 RCP2.6、4.5、6.0、8.5の4つの排出シナリオで実験を行っており、異なる排出シナリオ間の比較が可能となっている(図3.2)。 なお、RCP8.5については20kmメッシュの全球モデルでの実験も行っている。 全球20kmと全球60kmのRCP8.5実験は、CMIP6の高解像度モデル相互比較プロジェクト(HighResMIP)実験として行っている。 HighResMIPは気候モデルの水平解像度を高解像度化することによる気候再現へのインパクトを、世界各機関の気候モデルで相互比較するものであり、 実験結果を他機関の結果と比較することが可能となっている。
 このように20世紀中頃から21世紀末までの連続した実験を行うことで、極端な気象現象が過去から21世紀末にかけてどのような推移で変化していくか、 温暖化による変化が自然変動の変動幅を超えて明瞭になる時期が、どういう指標でいつ頃にはっきりするのか等を調べることが可能となる。 それにより、過去の経験を超える変化が自然災害や水資源・食糧生産に重大な影響を及ぼす可能性や、 また、それらが排出シナリオによってどのように変化するかを調べることができる。
 温暖化による変化が気温の上昇幅に比例するような現象の場合にはd4PDFの複数の温暖化レベルを参照し、結果を内挿することで途中の状態を推定することができるが、 そのような比例関係が成り立たない、あるいははっきりしていない現象(積雪・渇水・海岸浸食等)や、過去数年から10年程度の履歴が重要な現象(水資源・農業に関する現象等)については、 連続実験での時間推移を調べるのが有用と考えられる。また、それにより気候変動適応策の開始時期についての分析への利用も考えられる。
 ただし、本実験は各排出シナリオでそれぞれ1メンバの実験であり、 このデータだけでは気候の内部変動(海洋の10年規模変動、中高緯度大気の年々変動など)と温暖化による気候変化を切り分けることができない場合があることに注意が必要である。 特に近未来や低排出シナリオといった温暖化による変化が小さい場合や、低頻度の事象、狭い領域で発生する事象については、2つの実験間の差には、 内部変動による偶発的な気象現象の影響が大きく表れる可能性が高い。 また、図3.2において同じシナリオでも21世紀後半に0.5°C以上の差が発生しているなど、 気候モデルの違いによっても差が発生する。その際には、気候の自然変動の大きさを、d4PDFを活用して見積もるなど、他の実験と組み合わせて利用することが必要となる。

図3.2

図3.2

図3.2 150年連続実験における、日本の陸上で平均した地上気温10年移動平均の1950-1979年平均からの偏差 (Mizuta et al., 2022)。 単位は℃。細線が60kmモデル、太線が20kmモデル。緑線は都市化の影響を取り除いた15地点の測候所データ。

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③ 統計的ダウンスケーリング(統計的DS)

 統計的DSとは、過去の観測データから求められた統計的関係(具体的には、広域の気圧配置や気温、降水量分布等と、ローカルな気温、降水量等の気象要素の統計的な関係等)を用いて、 全球モデル等による予測を高解像度化する手法である。力学的DSのように領域モデルを用いて計算を行うことはないため、力学的DSと比べると圧倒的に計算負荷が小さいというメリットがある。 従って、多数のシナリオや長期間・広領域を対象に実行することが可能である。また、統計処理するための観測データを十分に用意できれば、高解像度のデータを少ない計算資源で作成することもできる。
 このようなメリットがある一方で、統計的DSでは、領域モデルを用いた空間高解像度化は行われないため、全球モデル等の格子サイズで表現されないような地形性の降雨等、 小規模なスケールの現象は再現されにくいことに注意が必要である。このため、災害をもたらす局地的な豪雨等の再現性は高くないと考えられる。 また、領域モデルを用いた計算がされないことから、得られたデータの格子間の物理的整合性は担保されないことにも注意が必要である。 加えて、過去の観測データの統計的関係を用いることから、統計処理に必要となる十分な観測データが必要であるほか、そもそも観測データが十分にない山岳域等では十分な再現性が期待できない。 また、過去にまれにしか観測されないような極端現象の表現には不向きであるため、幅広い分野で利用できるが、極端現象に着目することが必要な防災分野での利用には向いていない。
 また、統計的DSでは過去の統計的関係が将来も適用可能であるという前提でデータの高解像度化が行われているが、この仮定が正しいかどうかは必ずしも自明ではない。データを利用する際は、 この点にも留意する必要がある。
 なお、統計的DSのより詳細な解説は、飯泉ほか(2010)を適宜参照されたい。

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(4)モデル解像度とデータセットの利活用の関係

 データセット2022には、2km解像度の雲解像モデル(CPM)によるデータセットがある(①「全球及び日本域気候予測データ」(解像度2km版)、②「日本域気候予測データ」(解像度2km版))。 世界的に見ても先進的なこの解像度のモデルの利得と利用上の注意について、以下で解説する。 まず、豪雨災害をもたらす降水システムの再現には2kmCPMは有効であるが、降水システムを構成する個々のセルの挙動までの再現には1km以下の解像度が望まれることについて説明する。 次に、2kmCPMは、grid size stormという、データの利用にあたり注意すべき点があることを述べる。
 モデル計算結果を活用する場合、モデル解像度により再現できる現象は制限されることを理解したうえで、様々あるデータから適切なものを選ぶ必要がある。
 図4.1は、降水の時間スケールごとの再現性を見た1例である。 横軸は降水の時間スケールで、縦軸はそのパワー(エネルギー(スペクトル)密度;各時間スケールでの降水量の振幅の2乗)である。 これは、大手町の旧気象庁本庁での観測値(黒線)と、各解像度モデルの値を比較したものである。 ここでは、60kmモデルも20kmモデルも数時間から時間雨量のシグナルを十分に出せていないことが分かる。 他方、5kmモデルは時間雨量までよく追随している。 このことから、日雨量以上を問題にする場合と、時間雨量の挙動を見る場合で、使用に適したモデル解像度が異なることが分かる。

図4.1

図4.1

図4.1 東京大手町の旧気象庁本庁庁舎における、時間降水量のパワースペクトラム。AGCM60/20は、全球大気モデル(全球モデル)の解像度60km/20km版。 NHRCM05は、地域気候モデル(領域モデル)の5km版。Obs.は官署の観測値(Takayabu and Hibino, 2016)。陰影の部分は信頼区間95%の範囲。

 図4.2(Orlanski(1975)のヒエラルキー表示に基づき作成)に示されているように、現象の時間スケールと空間スケールは深く結びついている。 時間スケールの大きな現象は、その空間スケールも大きい。このため、図4.1で分かるように空間解像度の高いモデルほど、短時間降水の再現性が高くなる。 また、モデルに搭載される様々な物理スキーム3は空間解像度によって降水現象の表現の仕方が変わってくる。 通常、解像度(格子間隔)が5km程度より低い場合は個別の対流を解像できないために、対流パラメタリゼーション(カイン・フリッツ手法4など)が使われる。 解像度5kmあたりからは対流を陽に表す“雲解像モデル(CPM)”となる。解像度1kmを切ってくると、対流に影響を与える大気境界層の扱いが変わってくる。 そのため、時としてLES(Large Eddy Simulation)が採用される。 降水の微細な構造を表現したい場合、高解像度のモデルが必須になる。以下、これまでの研究のレビューを通じてそのことを再確認したい。

  • 3:数値予報モデルは、空気の動きを表現する流体力学的要素部分のモデルと、対流、地表面との熱・運動量のやり取り、大気放射の要素等の諸要因を表現するサブモデルの集合からなっている。 後者のサブモデル群を、「物理スキーム」と総称する。
  • 4:通常の解像度のモデルでは、個々の対流雲の内部運動を再現できないために、集団としての対流雲の効果を表現する「対流パラメタリゼーション」が採用される。 古典的なものとして荒川・シューバートスキーム(Arakawa and Schubert, 1974)がある。 これは統計力学の考え方を応用して雲群の活動をマクロに評価したものである。 その後、様々なスキームが登場した。カイン・フリッツスキーム(Kain and Fritsch, 1990)もその1つで、解像度の比較的高いモデルによく用いられている。

図4.2

図4.2

図4.2 降水システムの階層構造。(Orlanski(1975)のヒエラルキー表示に基づき作成)

 気候変動においても、近年は極端現象に関心が移っている。災害をもたらすような極端降水をもたらす現象の再現性をチェックしておこう。 このような現象として代表的な対流系に、メソスケール対流系(MCS)と線状降水帯がある。図4.3は、北米のMCSの構造を250m解像度のLESモデルの結果で示したものである。 上昇流(updrafts)と下降流(downdrafts)が複雑な構造を示していることが分かる。

図4.3

図4.3

図4.3 250m解像度モデルによるメソスケール対流系(MCS)の主要な構成要素。上下方向に10倍拡大してある(Prein et al.(2021)より、CC-BY 4.0 ライセンス(https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)に基づき転載)。水平スケールはおおよそ100km程度(Houze, 2014)

 図4.4は、MCSの再現性のモデル解像度依存性を調べた結果である。12km解像度では、対流のパラメタリゼーション(カイン・フリッツスキーム;KFスキーム) の有無にかかわらずMCS内の詳細な降水パターンは出現していない。雲解像モデル(CPM)の4km以下の解像度ならMCSの構造を表現できることが分かる。 ここで示唆されているのは、米国のMCSの解像には4km CPMが必要であるということである。 解像度12kmのモデルでは自然には生じ得ない大きなスケールの上昇流が生じ、この場合降水量を過大評価している(図4.4a, b中の大きな白抜き部)。 この上昇流の存在は、このモデルによる気候変動下の降水量変動の評価に悪影響を及ぼす原因ともなっている。

図4.4

図4.4

図4.4 MCSの1例における (a-g) 様々な格子モデルにおける時間降水量パターンと、 MCSの(h) 軌道、(i) 最大降水量、(j) 移動速度、(k) 対流性降水量平均値、 (l) 層状性降水量平均値、(m) 250m版との形状の差異。(Prein et al.(2021)より、 CC-BY 4.0 ライセンス(https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)に基づき転載)

 それならば、解像度1km未満のLESモデルはオーバースペックなのだろうか?図4.5は、MCS内部の構造の再現性の解像度依存性を見たものである。 MCS内部の詳細な鉛直循環パターンを見るには、LES(図4.5c)が望ましいことが分かる。 先の図4.2に見る、対流の最小単位である個々の積乱雲の内部構造の再現には1km未満の解像度が望まれる。 同様の結果は線状降水帯を調査したKato(2020)でも確認されている。

図4.5

図4.5

図4.5 MCSの1例の、水平解像度 (a) 12km、(b) 4km、(c) 250m のモデルによりシミュレートされた姿。(Prein et al. (2021)より、CC-BY 4.0 ライセンス(https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)に基づき転載)

 それでは、日本の梅雨期の降水の様子はどうであろうか?図4.6に梅雨前線に沿う、より広範囲の降水の再現性の解像度依存性を調べた結果を示す。 この例は、梅雨期の2020年6月28日から7月8日の10日間降水の例である。 各実験共通でモデルの降水量は観測値に比べてやや少なめであるが、CPMではいずれも、梅雨前線に沿った東西に伸びる降水域が再現されている。 さらに5km解像度から2km、1km、500mと解像度が上がるにつれて、降水量の多い地域が線状に集中していたものが広がりを持つようになり、 観測値のパターンに近づいている。

図4.6

図4.6

図4.6 2020年の梅雨前線上の強雨の再現実験結果の解像度依存性。期間は2020年6月28日の00UTCから、7月8日の00UTCまで。上段左は解析雨量、 上段右図が積雲対流スキームとしてKFスキームを用いた5km NHRCM。 上段中図が積雲対流スキームをoffした5km NHRCM、下段は左から順に、2km、1km、500m NHRCMで、 いずれもCPM(統合的気候モデル高度化研究プログラム 領域テーマC 統合的気候変動予測 令和2年度研究成果報告書(文部科学省研究開発局, 2021)より転載, Fukui and Miura(2021)からの引用)

 モデル解像度がCPMにとって中途半端に粗いと、grid size stormという副作用が生じることが分かっている。 これは、粗いモデル解像度では対流セル内の上昇流域を解像できないために1格子に集中した上昇流となり、1格子程度の降水域が点在することになるものである。 図4.7は、その様子を見たものであるが、2km 解像度CPMまでは格子スケールサイズの上昇流域が見えている。このため、図4.8の計算例に見られるように格子点降水が顕著に出現することになる。 これを避けるためには積雲対流スキームを併用する方法があるが、①「全球及び日本域気候予測データ」、②「日本域気候予測データ」ではそのような対策はしていないため、 特にsnap shot(短時間のデータ)を扱う際には注意が必要である。図4.6のように時間積算値で見る場合にはその影響は残らない。

図4.7

図4.7

図4.7 積雲対流スキームを用いないNHRCMにより再現された積雲対流の平均的な構造。 (a) 5km NHRCM、(b) 2km NHRCM、(c) 1km NHRCM、(d) 0.5km NHRCM (統合的気候モデル高度化研究プログラム 領域テーマC統合的気候変動予測 令和3年度研究成果報告書(文部科学省研究開発局, 2022)より転載, Fukui and Miura(2021)からの引用)

図4.8

図4.8

図4.8 NHRCMの(左)5kmモデルと(右)2kmモデルの時間降水量のsnap shot(森元, 2018)

 このように、データセット2022で扱っている2kmモデルの結果は、先端的な結果であるために適切に使えば有用であるが、 その振る舞いはデリケートな面があるので取り扱いには注意が必要である。

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(5)CMIP5とCMIP6の関係性(AR5とAR6、コアシナリオ等)

 全球の気候モデルあるいは地球システムモデル(以下、まとめて気候モデルと呼ぶ)を用いた気候シミュレーションは、世界気候研究計画傘下のCMIPがとりまとめてきた。 CMIPは、シミュレーションのプロトコル、出力変数のリストや形式を定めるとともに、必要となる境界条件などのデータを作成している。 また、世界共通のデータアーカイブとなるEarth System Grid Federation(ESGF)上で、提出されたシミュレーションデータを整理して公開しており、 世界中のだれでもデータをダウンロード、利用可能にしている(https://esgf.llnl.gov/)。
 CMIPのシミュレーションは、IPCC評価報告書と連動しており、AR5では第5期(CMIP5)、AR6では第6期(CMIP6)のシミュレーションデータが評価に主に用いられた。 各期の間隔はIPCC報告書と同様に7~8年であり、CMIPに参画する世界のモデリングセンターは、気候モデルをその都度、改良及び高解像度化してシミュレーションを実施している。 また、参画するモデルグループも期を追うごとに増えており、CMIP5では19機関だったのがCMIP6では28機関となっている。 各モデリングセンターは複数のバージョンを開発しているので、シミュレーションに使われる気候モデルの数はモデリングセンターの機関数よりさらに多く、CMIP6では103であった。 なお、日本からは2グループ、7モデルが参加している。
 気候モデルの空間解像度は、計算機資源に大きく制約される。大まかには、水平のメッシュを半分にすれば8倍の計算機能力が要求されるので、高解像度化を急激に進めることは難しい。 CMIP5とCMIP6では、典型的なモデルの水平解像度(大気100~200km、海洋100km弱)は変わっていないが、一方で鉛直方向のデータ層数は増えており、 CMIP6では特に大気モデルトップを成層圏界面まで上げる、いわゆるhigh topモデルが増えた。 また、HighResMIPと呼ばれる、主に高解像度大気モデルを用いるサブプロジェクトがCMIP6に組み込まれ、水平25~50kmの解像度で一部のシミュレーションが実施された。
 気候モデルの改良は、新しい観測データやプロセスの理解に基づき、パラメタリゼーションと呼ばれる素過程の計算方法を精緻化、あるいは追加することで達成される。 近年では、衛星観測による高緯度混相雲の理解が進み、モデルの雲パラメタリゼーションが改善された。 この結果として、CMIP6モデルでは高緯度における放射のバイアスが減少した。 また、高解像度化することで、低緯度の海洋湧昇域の表現がよくなり、海面水温が高いバイアスも低減できることが分かってきた。 このように、気候モデルとしての改善は徐々には進んでいるものの、全体としてCMIP5とCMIP6モデルの現在気候再現性に明らかな違いは見られない。
 高緯度の雲の誤差が減ったことで、いくつかのCMIP6モデルでは全球の雲フィードバックがより温暖化を促進する方向に働くようになった。 その結果、モデルにおける温暖化の大きさを測る平衡気候感度(二酸化炭素濃度倍増後に気候システムが再び平衡状態に達したときの全球地表気温上昇量)が CMIP5よりも大きくなった(アンサンブル全体で約+0.5℃)。 しかしながら、モデルの他の誤差が低減したわけではないため、CMIP6モデルの高い気候感度自体は「正しい」結果であるとは考えられていない(IPCC AR6)。 一方で、AR6では、地域の気候変化における多くの要素は温暖化レベル(全球地表気温の上昇量)にある程度関係すると評価されたため、 気候感度はダウンスケーリングデータにとって無関係な量ではないものの、気候感度の高いモデルでアジア域の気候変化が有意に異なるという証拠はまだ十分に得られていないため、 ダウンスケーリングにおいて高感度モデルを除外するべきかどうかを決定するための確かな証拠は得られていない。

① SSP-RCPシナリオについて

 気候モデルを用いて将来の気候変動を予測するためには、将来の温室効果ガス排出量・濃度、エアロゾル排出量、土地利用などを入力データとして与える必要がある。 しかし、将来の社会経済を長期にわたって予測することはできないため、温室効果ガスの排出量なども予測できない。 代わりに気候変動研究では、化石燃料に依存する社会、持続可能性に配慮する社会など様々な想定に基づく社会経済シナリオと、 その社会経済シナリオと整合的な温室効果ガス排出量・濃度や土地利用のシナリオを統合評価モデル(エネルギー・環境・経済の問題を統合的に扱うモデル)を用いて作成する。 そのように統合評価モデルで作られた複数の温室効果ガス排出量・濃度や土地利用等のシナリオを気候モデルの入力データとして用いることで、気候変動予測の不確実性の幅を評価する。
 AR5に向けては、RCP8.5、RCP6.0、RCP4.5、RCP2.6の4つのRCPシナリオが作られ、CMIP5で気候モデルの入力データとして使用された。 RCPに続く数字は放射強制力の大きさ(W/m2)を示している。 RCP8.5は、CMIP5モデルの平均した21世紀末までの世界平均気温上昇量が4℃に近いことから4℃シナリオと呼ばれることがある。 またRCP2.6は、世界平均気温上昇量がパリ協定の目標である2℃を下回る可能性が66%以上あることから、2℃シナリオと呼ばれることもある。
 RCPシナリオは、気候モデルの入力データとして必要な温室効果ガス濃度や土地利用のシナリオは含んでいるが、そのベースとなった社会経済のシナリオは正式には公開されなかった。 これは、パラレルアプローチという戦略に基づくものである。 AR5以前は、まず社会経済の研究を行い、そこから出てきた排出シナリオを使って気候モデルの予測実験が実施され、 最後に社会経済研究から得られたGDP等と気候モデルによる将来予測実験データを用いて影響評価が行われていたが、 それぞれの分野の研究に数年はかかるため、全体では非常に時間がかかってしまうという問題があった。 そのためパラレルアプローチでは、まず温室効果ガス濃度や土地利用のシナリオ(RCP)を気候モデルコミュニティに渡し、 気候モデルで将来予測計算を行う間に新たな社会経済シナリオを作成し、その両者を利用して影響評価を行うことで、 気候変動研究全体のスピードを上げることを目指した。 しかし、このアプローチはAR5の公表までには完結せず、全体を統合するプロセスはAR6に持ちこされた。
 AR6に向けて作られた社会経済シナリオが共通社会経済経路(Shared Socioeconomic Pathways, SSP)である。 SSPでは、緩和策と適応策の困難性の2軸を取って、その両端と中間の5つのシナリオが作成された。 SSP1は、持続可能性に重きを置く世界で、緩和策、適応策とも困難性は低い。SSP5は化石燃料に依存した発展をする世界で、緩和策の困難性は高いが、適応策の困難性は低い。 SSP4は格差が拡がる世界で緩和策の困難性は低いが、適応策の困難性は高い。SSP3は地域が分断された世界で、緩和適応ともに困難性が高い。 SSP2は中庸な世界である。それぞれのSSPで緩和策を考慮しないシナリオをベースラインと呼ぶ。 例えば化石燃料に依存するSSP5ではベースラインの放射強制力は8.5W/m2になる。 この社会経済シナリオSSP5と濃度シナリオRCP8.5の組み合わせをSSP5-8.5と呼ぶ。 持続可能性に考慮したSSP1ではベースラインの放射強制力は6.0W/m2になるので、その組み合わせはSSP1-6.0と呼ばれる。 このようにSSPごとにベースラインの放射強制力は異なる。また一つのSSPシナリオでも、緩和策の強さによって様々なRCPとの組み合わせを考えることができ、 例えばSSP1の世界で緩和策によって放射強制力を2.6W/m2まで下げたシナリオをSSP1-2.6と呼ぶ。
 このように多くのSSPとRCPの組み合わせ(SSP-RCPシナリオマトリックス)を考えることができるが、CMIP6では気候モデル研究者の負担を抑えるために、 SSP5-8.5、SSP3-7.0、SSP2-4.5、SSP1-2.6の4つを優先順位の高い実験として指定した。 またパリ協定で1.5℃目標が掲げられたことから、1.5℃気候安定化と整合するSSP1-1.9も提案されたが、スケジュールの関係でCMIP6内での優先順位は低くなっている。 CMIP6のSSP5-8.5、SSP2-4.5、SSP1-2.6実験の結果は、それぞれCMIP5のRCP8.5、RCP4.5、RCP2.6実験と比較可能なものと想定されているが、 同じ放射強制力レベルであってもエアロゾル排出量や土地利用等のシナリオは異なるため、見たい現象・地域によっては有意な差が生じる可能性はある。

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(6)バイアス補正について

予め本節の要点を示せば、以下のようになる。

  • バイアス補正とは気候予測データセットの統計的特性(例:平均値、n年再現値)を参照値(例:観測値や再解析データ)の統計的特性に近づける操作である。
  • バイアス補正は各手法により目的が異なる。あるバイアス補正手法を用いることで、気候予測データセットのあらゆる特性が参照値に近づくとは限らない。 補正の目的外の要素については逆に補正による変化が利用に不適切なものとなっている可能性もある。
  • バイアス補正手法選択の前に、直接的に気候予測データセットの値を修正するバイアス補正(直接的バイアス補正)以外の方法が利用できないかをまず判断する。
  • 直接的バイアス補正手法は、バイアスの仮定、補正の枠組み、関数の3つにより特徴が決まる。
  • 気候予測データセットの特徴、バイアス補正を行う期間、対象とする解像度、利用の目的に応じて適切な直接的バイアス補正手法を選択することが望ましい。

 本解説では以下①から③で直接的バイアス補正手法の要点を述べたうえで、④において利用の多い例を通じて具体的な方法を説明する。

① バイアス補正の概要

 気候予測データセットから得られる各種変数の値と観測値や再解析データセットの値との間には一定の差異が存在する。 この差異が気候変化の影響推計などの利用の際に支障となる場合に両者を近づけるための操作がバイアス補正として行われており、 本節では気候影響推計などを行う前に気候予測データセットに適用するバイアス補正について解説する。 気候予測データセットは気候を再現・予測するものであり、ある特定の日時の気象を再現・予測するものではない。 従って、同一の日時の気候予測データセットを参照値と比較することは適切ではない。両者の気候、つまり統計的な特徴を比較する必要がある。
 バイアス補正という言葉のもとで行われる操作には様々なものがある(詳細は渡部(2020)などの解説を参照)。 最も一般的なものは“直接的バイアス補正”と呼ばれるものであり、対象とする変数の値を直接操作するものである。 例えば、気候予測データセットの降水量に関する平均値が観測値よりも10%過少であるために、10%増加させて利用するといったような操作である。 ただしこのような操作は降水量の要因となる物理的な背景を無視して行われることから、降水量に関する時空間的な特徴を非現実的なものとする可能性がある。 これに対して、対象とする変数が有するバイアスの物理的な要因に遡って補正する“間接的バイアス補正”も行われている。 これは、降水量の背景となる台風の強度やコースを補正することで適切な降水量を得ようとする方法である。 さらに、気候予測データセットの値を変更するのではなく、気候予測データセットにおける現在と将来の値を比較した将来変化量の情報を用いることで、 気候予測データセットが有するバイアスの影響を回避する方法がある。 これは補正とは異なるが、気候予測データセットと参照値の間の差異の影響を除いて気候変化の影響推計を行うという目的を達成する方法としては有益な方法である。
 気候予測データセットの利用に際しては、できる限り気候予測データセットに不必要な変更を加えないという観点から判断すると、 将来変化量の利用などバイアス補正を回避する方法がある場合はそれが最も望ましい。 補正を行う場合でも、対象とする変数の背景にある物理的な要因を考慮する間接的バイアス補正を検討することが望ましい。 しかしながら、実際の気候予測データセットの利用では対象とする変数のみを扱う場合が殆どであり直接的なバイアス補正が必要となる場合が多い。 直接的なバイアス補正を行う場合には補正の操作がどのような統計的な特徴に基づき行われるかという点を理解しておくことが重要である。 以下では補正の代表的な例を示すとともに、その選択方法について述べる。

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② 直接的バイアス補正手法

 直接的バイアス補正手法の特徴は、バイアスの仮定、補正の枠組み、関数の3点により大きく分類することが可能である。 すなわち、直接的バイアス補正手法を選択する際にはこれら3点に対して、目的を踏まえたうえで適切なものを選択することが求められる。 以下3点の詳細を説明する。
 第一に、バイアスが何に対して一定と考えるかというバイアスの仮定の検討が必要である。 バイアスの仮定には、変数の値に応じてバイアスが一定であると仮定する変数値仮定と、生起率に応じてバイアスが一定であると仮定する生起率仮定がある。 図6.1に示す例の通りどちらの仮定を用いるかにより、同じ将来期間の気候予測データセットに対して、その値(95, 90, 80, 70, 60)に固有のバイアスがあると考えるか、 それとも順序に応じたバイアスがあると考えるかの違いが生じる。
 第二に、バイアス補正で扱う「参照値」、「参照値と対応する期間の気候予測データセット」、「補正対象期間(多くの場合将来)の気候予測データセット」の3つの統計集合のうち、 どの2つの間の関係を求め、残りの一つに当てはめるかという補正の枠組みを検討する必要がある。具体的には図6.2に示す3つの枠組みが考えられる。 バイアス型では参照値と参照値と対応する期間の気候予測データセットの関係を補正対象期間の気候予測データセットに当てはめる。 デルタ型(既存文献では変化率とする場合もあるが、比だけではなく差も扱われることからここではデルタ型とする。)では気候予測データセットの変化量に関する関係を参照値に当てはめる。 平均値や分散のみを考えるデルタ型は疑似温暖化手法と同様のものである。複合型では参照値と対応する期間の気候予測データセットに前述のバイアスと変化量を反映させる。 なお、平均値のみを対象とする場合、いずれの枠組みにおいても結果は同じとなる。つまり、これらの枠組みは対象とする統計集合の分散やさらに高次の特徴を決めるものである。

図6.1

図6.1

図6.1 変数値仮定と生起率仮定

図6.2

図6.2

図6.2 補正の枠組み

 最後に上述の2つの統計集合を結び付ける関数を検討する必要がある。 関数は大きく分けるとパラメトリックなものと順序統計量によるノンパラメトリックなものがある。 パラメトリックなものに関しては、何らかの確率分布に従うと仮定する方法や固有の関数(単純な例としては線形回帰式)を仮定するものがある。

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③ 直接的バイアス補正手法の選択基準

 直接的バイアス補正手法について選択する際には上述の各基準について検討することとなる。 第一の観点であるバイアス補正の仮定に関しては仮定の妥当さよりも技術的な制約により選択が行われることが多い。 生起率仮定では対象とする統計集合すべての値が補正の際に必要となる。 これは同じ値であってもその生起率によりバイアスが異なることを考えると理解しやすい。 このことは対象とする期間に様々な統計集合が含まれる場合(例えば2000年から2100年までの連続データのように異なる昇温量が含まれる場合など)は適用に注意を要する。 さらに、対象とする値を逐次補正する場合(つまり、対象とするデータの全容が不明の場合)には適用できない。対象とする統計集合をすべて扱うことから、 特に大規模なデータであれば計算機上での実施に必要な負荷が大きくなる。 一方で、変数値仮定においては参照値に基づいて推定したバイアスの範囲を外れる場合に補正をどのように行うかという外挿の問題に注意が必要となる。 すなわち過去に経験していない値に対してどのようなバイアスがあるかを推定しなければならないという問題が生じる。 これらの注意点を踏まえて、最終的な利用目的において問題の少ないものを選択することとなる。
 第二の観点であるバイアス補正の枠組みに関しては、統計的な特徴のうち変換関数により変化を陽に扱う関係が何かという観点で選択を行う。 デルタ型では参照値、バイアス型では補正対象期間の気候予測データセット、複合型では参照値と対応する期間の気候予測データセットの特徴が陽に扱われる。 従って、疑似温暖化手法のようにできるだけ参照値の特性を踏まえたものとしたい場合はデルタ型を用い、 できるだけ補正対象期間の気候予測データセットの特性を踏まえたものとしたい場合はバイアス型を用いる。 一方で、デルタ型では参照値と対応する期間の気候予測データセットと参照値の関係(𝐹bias)、 バイアス型では気候予測データセットにおける参照値と対応する期間と補正対象期間との間の変化(𝐹delta)は陽に考慮されない。 複合型ではこの両方の関係を陽に考慮できるが、他の2つの手法に比べると参照値と補正対象期間の気候予測データセットの特徴が補正に反映されない。 なお、図6.2の式から分かるように、複合型では参照値と対応する期間の気候予測データセットにバイアスと変化量の両方の関数を適用する。 このことが、d4PDFシリーズのような気候予測データセットと参照値の間でサンプル数が大きく異なる場合に利点となる (複合型に関する詳細はWatanabe et al.(2020)を参照のこと)。
 最後に、どのような関数を用いるかという点に関しては補正の対象となる変数の特徴を踏まえて選択を行う。 例えば、洪水リスク推計においてN日間の雨量に着目する場合にはGumbel分布等の極値分布の適用が考えられる。 また、d4PDFシリーズのような多数のアンサンブル計算結果を対象とする場合には順序統計量を適用することが考えられる。 ここでは当然のことながら多数のパラメータを持つものほど対象となる2つの統計集合の特徴を詳細に反映できるが、 その反面、パラメータの数が多いほど対象とする統計集合に関数が過適合するおそれが高まるため、 統計的な頑健性(多様なデータに対して安定的に適用ができる能力)は失われる。

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④ 直接的バイアス補正の実施例

 上記の分類において利用例の多い代表的なものが「変数値仮定・バイアス型」、「生起率仮定・複合型」である。以下ではこの2つを具体的に説明する。 前者は年最大日降水量のように連続した時系列ではなく特定の事象を抽出したものに対してバイアス補正を行う際に適用例が多い。 詳細は小林ほか(2020)を参照されたい。後者に関しては連続した時系列を対象とした際に適用例が多く、 大規模アンサンブル気候予測情報のように利用可能な年数の多い気候予測情報に適した方法である。 詳細はWatanabe et al.(2020)を参照されたい。
 まず、「変数値仮定・バイアス型」の具体的な実施方法は次の通りである。

  1. 参照値と、参照値と対応する期間の気候予測データセットそれぞれの値の生起率を求める。 今回例として挙げた洪水事例の場合などは極値統計による解析に関する知見の蓄積があることから、 参照値と参照値と対応する期間の気候予測データセットそれぞれに対して極値分布(最大値などの極端な値が従う連続確率分布モデル)を当てはめることが考えられる。
  2. 参照値と対応する期間の気候予測データセットの個々の値に対してそれぞれの参照値との差(もしくは比)を求める。 参照値と、参照値と対応する期間の気候予測データセットそれぞれの分布において生起率が等しくなる値に対応関係があると考え、 ここで求めた差(もしくは比)を気候予測データセットの個々の値に対応したバイアスと定義する。
  3. 補正対象期間の気候予測データセットの個々の値に対して2で求めた関係式からバイアスである差(もしくは比)を加算(乗算)したものを補正後の値とする。

 以上の方法において検討を要する点の一つは1における確率分布(この場合極値分布)の適合度である。 対象とする参照値及び参照値と対応する期間の気候予測データセットに対する分布のあてはまりの良し悪しがバイアス補正の精度にも影響する。 ここでの手法は通年の気候予測データセットすべてではなく年最大日降水量のような極値を対象としていることから、極値分布という外挿に適した方法が適用可能となっている。 このことが変数値仮定における外挿の問題を解決している。
 また、別の検討を要する点としてバイアスに関して差と比のどちらを用いるかという点がある。 従来、降水量を扱う場合など負の値が生じると不都合な場合を回避するために比が用いられてきた。 比を用いた場合には負の値が回避できる一方で、特に降水量の最大値付近において大きな比が適用されることで非現実的な値が生じる場合がある。 差を用いる場合そのような最大値付近の非現実的な値が生じる可能性は低いが、0付近の値において降水量が負の値になるなど非現実的な結果となる場合がある。
 次に、「生起率仮定・複合型」の具体的な実施方法は次の通りである。

  1. 1月から12月までの各月単位で、参照値と、参照値と対応する期間の気候予測データセット、補正対象期間の気候予測データセットの3つの統計集合に対してそれぞれ順序統計量を求める。 各月の統計集合に対してそれぞれ2以下を実施する。
  2. 参照値と対応する期間の気候予測データセットの順位に応じたバイアス量(参照値と参照値と対応する期間の気候予測データセットの差もしくは比)、 気候予測データセットの順位に応じた将来変化量(差もしくは比)をそれぞれ求める。
  3. 参照値と対応する期間の気候予測データセットと2で得られたバイアス量、将来変化量をもとに、バイアス補正後の値を各順位に対して推計する。 つまり、参照値と対応する期間の気候予測データセットの各順位に対してバイアスと将来変化量を反映したものを求める。
  4. 3で得られた値を補正対象期間の時系列に沿った形で並び替える。つまり、補正対象期間の気候予測データセットの時系列を、 対象となる期間における順位に応じて3で推計した値と置き換え補正後の値とする。

 以上の説明においては月単位で順序統計量を求めたが、この方法では月末と月初めで補正が大きく異なる可能性が残される。 この解決方法として移動窓が利用されている。 すなわち、月単位ではなく対象となる日に前後数日を加えた何日かを対象として推計を行う方法である。 同様に、順序統計量に関しても各順位で比較するのではなく、対象となる順位とその前後を加えた複数の変数で対応関係を求める方法が用いられている。
 順序統計量を用いる場合も「変数値仮定・バイアス型」で述べた差と比の選択が必要となる。 また、降水量の場合、降水量の有無に関する閾値を予め求めたうえでその閾値を超える値にのみ順序統計量を求める方法がある。 渇水の解析など降水の有無が重要な場合には採用を検討すべき方法である。
 利用の多い2つの方法について述べたが、これまでの利用の多さが手法の妥当性を示す訳ではないことに注意が必要である。 既存の直接的バイアス補正は変数の時空間分布を考慮しない。 このため修正が大きい補正手法であればあるほど、対象とする時空間単位(メッシュ単位)の統計的特徴は参照値と近づいているが、 広域や長期間を対象とすると適切ではない変更を加えている可能性がある。 これは既存の直接的バイアス補正手法が時空間独立の仮定のもとで行われている限り避けられない問題であり、 直接的バイアス補正の適用に際して理解しておくべき事項である。

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(7)利用例(主なもの)

 データセット2022のd4PDFをもとにした影響評価は、広い分野、特に時間単位の解像度の物理情報を必要とする極端水害の分野で活用されている。 とりわけ豪雨や台風は、東アジア及び北西太平洋における主要な自然災害であるため、 タイムスライス実験やd4PDFを用いた様々な研究展開が図られている(Mori and Takemi, 2016; Mori et al., 2021b)。 d4PDFは、これまで行われてきた20~30年程度のタイムスライス実験と比べて、一般的な防災・減災インフラ整備の基本情報である数百年に一度発生する豪雨、 洪水、高潮などの極端ハザードの長期評価指標である1年間に1/Nの確率で発生する再現期間N年値を直接推定可能とした点に大きな特徴がある。
 以下では、代表的な風水害についての研究成果を中心に、データセット2022の主な利用例を紹介する。より詳しい内容については、 いくつかのレビュー論文(例えば、Ishii and Mori(2021)、石井と森(2022))を参照されたい。

① 風水害リスク評価での利用

ⅰ)河川リスク評価での利用

 河川災害リスク評価では、流域レベルでの詳細な降雨情報が必要とされる。星野ほか(2018)や田中ほか(2019)により、 日本全国の一級河川の各流域の平均的な年最大降水量が将来的に増加し、その増加率は地理的な位置に依存することが明らかにされている。 さらに、アンサンブル数は少なくなるものの、複雑な地形を伴う降水量の時間変化を検討するため、 d4PDFを局所的に力学的DSしたデータである⑥「北海道域d4PDFダウンスケーリングデータ」(5kmメッシュ)を用いた河川流域への評価が進められている。 星野と山田(2018)は、将来気候において北海道の十勝川流域では年最大降雨量が空間的に集中することを示している。
 河川災害リスク評価では、d4PDF を用いた極端な降雨や河川流量の評価が行われている。 例えば、立川ほか(2017)は⑤「全球及び日本域確率的気候予測データ(d4PDFシリーズ)」の日本域データ(20kmメッシュ)の結果を用いて、 日本の3つの主要流域を対象に極端な河川流量における将来変化を予測した。 図7.1は、荒川、庄内川及び淀川の代表河川流量の非超過確率(ある閾値を超えない確率)の将来変化を示している。 +4℃実験(⑤のうち、全球平均気温が4℃上昇した世界を仮定した予測実験)の結果は過去実験よりも流量が増加しており、将来変化の増加率は、 非超過確率が大きくなるほど大きくなることが分かる。特に+4℃実験による最大クラスである再現年数900年の流量は大きくばらつき、 極めて大きな流量発生の可能性が示されている。 日本の主な河川流域における+4℃実験の再現年数200年の年最大24時間降水量は、1.3〜1.4倍であるのに対し、 同じ確率の年最大時間流量は1.5〜1.7倍の変化が予想されている(図略)。 このように、主要河川の時間流量については、前述の降水量に関するクラウジウス・クラペイロンの関係7%/℃(+4℃で年最大24時間降水量が1.3~1.4倍)よりも 増幅率が大きいという特徴が得られている。同様の検討は、日本や海外の様々な流域で展開されている。 例えば、一級水系すべて(小林ほか, 2020)、長良川流域(原田ほか, 2018)、北海道(舛屋ほか, 2018)における研究成果が得られている。
 極端な河川氾濫の予測は、河川災害への適応策や経済的なリスク分析に直接適用されている。 時岡ほか(2018)は、北海道地方の事例として、治水計画を考案するための様々な対策を検討し、治水対策の違いによる被害軽減効果を経済的に評価している。 また、Tanaka et al.(2018)は、日本の淀川流域を対象に、確率論的降雨モデリングを用いて洪水リスクを検討している。 図7.2は、「全球及び日本域確率的気候予測データ(d4PDFシリーズ)」の日本域データ(20kmメッシュ)に基づく淀川の洪水による経済被害の超過確率を示している。 洪水リスクによる経済的被害は、+4℃実験の気候条件で明らかに高くなり、 その増加原因は、主に河川流域での豪雨の頻度が増加したことに起因することが示されている(Tanaka et al., 2018)。 d4PDFを用いることにより、パラメトリックな誤差分布を仮定することなく、 物理プロセスを表現した精緻な気候モデルに基づく洪水リスク曲線を推定することが可能となっており、 これらの経済評価まで踏み込んだ研究では、そうしたd4PDFのメリットが活かされている。

ⅱ)沿岸リスクの評価での利用

 d4PDFは、沿岸部の水害リスク評価にも広く用いられている。 伊勢湾台風など歴史的に高潮被害が多い我が国では、高潮の将来的な変化を予測することは、沿岸域リスク推定で重要である。 高潮は、台風の強さ、移動速度、特定の湾への進路の組み合わせによって強さ(水位)が大きく変化するため、 ある湾に注目した場合の有意な水位上昇が発生する確率は極めて低頻度と予想されている。 Mori et al.(2019)は、d4PDFの風速と気圧を直接用いて、東京湾と大阪湾を対象とした高潮偏差の将来変化を検討し、 再現年数100年の場合、大阪湾では0.3~0.45m増加することを予測している。 将来気候では、台風発生数の減少が全体的に高潮偏差を減少させる一方で、 強い台風の増加は再現年数が長くなるに従い高潮偏差を増加させる2種類の効果があることを明らかにしている。 さらに、再現年数数百年の最大クラス高潮(L2高潮)についても検討が進められつつあり、 d4PDFはその評価や検証に活用されている(例、Mori et al., 2021a)。
 気候変動に関する沿岸災害リスク評価では、波浪の将来変化についても検討が行われている。 平均波浪場は砂浜や環境場に対して重要であり、極端波浪は越波などを伴う浸水リスク評価に重要となる。 特に我が国の沿岸部の極端波浪の将来変化は海岸施設の設計に密接に関わる。 極端な海洋波は、沿岸・海洋・環境工学にとって重要である。 Shimura et al.(2017)では、タイムスライス実験をもとに、北太平洋西部地域での台風の将来変化の影響を受けた、 再現年数10年の高波の増加と減少の両方が報告されている。 図7.3に示すのは、データセット2022に収録されている⑮「全球及び日本域波浪予測データ」と他機関の予測結果4アンサンブルをもとにした 再現期間10年の確率波高(極端波高)の将来変化のアンサンブル平均値と標準偏差である。 図のように、極端波高の将来変化は、日本の太平洋側で20%(波高で2m)以上の将来変化を示し、北半球高緯度での増加傾向が顕著である。
 冬の温帯低気圧は、日本海から北海道沿岸を中心に高潮や高波を発生させ、しばしば被害を与えている。 ⑩「日本域d4PDF低気圧データ」を用いた冬の温帯低気圧の将来変化についても検討が行われている(高ほか, 2018; Ninomiya et al., 2021)。 冬の温帯低気圧に加えて、高潮等の評価で用いられる台風のトラックデータ(Webb et al., 2019)も、 データセット2022に収録されている(⑨「全球d4PDF台風トラックデータ」)。

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② その他様々なリスク評価での利用

 d4PDFを始めとするデータセット2022に収録のデータは、上記の河川や沿岸の風水害以外にも、様々な分野で活用が進んでいる。 気候変動が水資源や農業に与える影響は、正負の影響が考えられている。 Iizumi et al.(2018a, b)は,d4PDFの現在と非温暖化実験をもとに、20世紀初頭からの世界規模での主要作物の経済的生産損失を推定している。 作物の収穫量シミュレーションでは、低緯度地域では収穫量が大幅に減少し、高緯度地域では大幅に増加することが示されている。 水資源での活用も進んでおり、適応策に関連して将来の河川流量変化に伴うダム利水操作への影響等の応用例がある(野原ほか, 2018)。
 熱中症など人体に影響する気温や湿度などの暑熱環境については、Kim et al.(2018)は、日本の横浜みなとみらい21地区を対象に、 気候変動が空調用冷暖房システムに与える影響を調査している。その結果、+4℃実験結果では、電力消費量が140%以上に増加することが示されている。
 また、農林水産業、水資源・水環境、森林生態系、観光業等への利活用事例については、 『「日本の気候変動2020」 (詳細版)』 (文部科学省・気象庁, 2020)付録3.3等にまとめられているので、参照されたい。

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③ 予測不確実性の評価

 極端な風水害を対象としての評価はまだ進んでいないが、予測された将来変化に対して、排出シナリオ、気候モデル、 影響評価モデル等のそれぞれに起因する不確実性を評価することは重要である。 いくつかの影響評価では、予測された将来変化の不確実性に対しての要因分析が行われている。
 一例として、全球モデルの大気場を外力として波浪モデルにより計算した、現在気候条件、 将来気候条件における波浪変化についての結果を図7.4に示す(Morim et al., 2019)。 将来気候条件には、RCP4.5及びRCP8.5シナリオを用いて、温室効果ガス濃度による波浪将来変化を大規模にアンサンブル評価5している。 モデルアンサンブル数は、RCP4.5で72、RCP8.5で74であり、これにより将来の平均的変化とその不確実性(予測のばらつき)が評価できる。 温暖化に伴い、波浪の波高、周期の増減や波向の変化などが生じ、これらの変化は海域によって異なり、 波高が±10%、周期が±5%、波向の変化が最大17度の幅で増加もしくは減少することが示されている。 特に日本周辺は将来変化が大きく、波高と周期が10%及び5%前後減少することが予測されている(図略)。
 また、この例では全球の波浪の将来変化予測の不確実性の支配的な要因についても分散分析6により定量化している。 図7.4の全球の波高の将来変化については、気候モデルに起因する不確実性が約30%、温暖化シナリオ(排出シナリオ)の不確実性と 波浪モデルに起因する不確実性がそれぞれ約20%存在し、これら3つの相互作用による不確実性が約30%である。 将来予測の不確実性は海域により異なり、日本周辺では他の海域と比較して温暖化シナリオに依存する不確実性が高い。
 このように、温暖化による将来変化は、排出シナリオ、気候モデル、影響評価モデルに依存した変化があり、 d4PDFに加えてCMIP6等の活用により複数の気候モデル、影響評価モデルを用いたリスク評価が必要となりつつある。

  • 5:多数の予測結果を用いて平均及びそのばらつきを推定する評価方法
  • 6:変動要因を誤差変動と各要因及び交互作用に分解することで各要因の効果を判定する解析

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④ 実務での利用

 データセット2022に収録のデータを用いた気候変動に伴う風水害リスクの予測結果は、特に水害に関わる社会基盤インフラ整備の政策に活用され、 大きな影響を与えている。例えば、国土交通省及び農林水産省等の治水、都市浸水、砂防そして海岸保全に関する委員会の答申、 提言及び関連した基礎資料に活用されている。まずは、河川の治水計画に関わる降雨の将来変化予測情報としての利用から始まり、 その後、砂防や沿岸域の保全についての利用に拡大している。中央省庁だけでなく、地方自治体での利用も進みつつある。
 例えば、大阪府河川構造物等審議会では、影響評価からさらに適応策として、 現在更新の検討が進んでいる大阪の津波・高潮対策水門(三大水門)の新規設計条件策定に実際に活用されつつある。 図7.5は、三大水門の設計についての審議会でまとめられた2100年頃の設計条件の変化である。 図7.5aに示すように、d4PDFを用いて施設設計で用いられている想定台風の将来変化を、+2℃及び+4℃の条件で求めている。 これに海面上昇を加えて、図7.5bに示すように、将来気候における水門の設計水位は+2℃で+1.24m、+4℃で+2.45mと求められた。 2100年の予測には様々な不確実性が伴うため、施設設計では作業のやり直しがなくかつ過剰投資にならないように、 初期投資と将来のアップグレードを考慮した順応的な計画が考えられたのも特徴である。 +2℃の将来気候条件は、当初設計の段階から考慮され、+4℃の気候条件は、後施工による補強等の設計条件として検討が行われた。
 大阪の高潮水門のように我が国の高度成長期に整備された大型防災施設は、これから置き換えの時期に入りつつある。 大型防災施設の供与年数は長く、多くは100年前後が想定されているため、2100年前後の気候変動予測結果は大変重要な情報となる。 このような事例は今後増えることが予想され、気候変動予測データの社会インフラ整備への利用が期待される。 これらに加えて、データセット2022に収録のデータは、損害保険会社等の民間企業の気候リスク評価にも活用され、 さらに博物館での展示資料など様々な分野で活用されている。

図7.1

図7.1

図7.1 年最大時間流量の非超過確率プロット(右:荒川、中:庄内川、左:淀川,青:過去実験,赤:+4℃実験)(立川ほか, 2017)

図7.2

図7.2

図7.2 淀川氾濫の経済的被害の超過確率(青:過去実験,赤:+4℃実験)(Tanaka et al., 2018)

図7.3

図7.3

図7.3 台風による極端な波の高さの将来変化(単位:%)(Shimura et al., 2017)

図7.4

図7.4

図7.4 平均波高の将来予測の不確実性:気候モデル、温暖化シナリオ、波浪モデルの違いが将来変化に与える割合(RCP4.5及びRCP8.5の分析)。 左:将来変化に対する寄与率の空間分布(4要因を加えると1)、右:将来変化に対する寄与率の年平均、3~5月、6~8月、9~11月、12~2月の全球平均値。 右のバーの色は、気候モデルの違いによる要因(GCM)、波浪モデルの違いによる要因(WMM)、温暖化シナリオによる要因(RCP)及び これらの相互作用を示している(Morim et al., 2019)

(a) 想定台風上陸時の中心気圧の将来変化



(b) 将来気候における水門天端高の変化

図7.5 d4PDF等をもとにした水門設計条件(大阪府河川構造物等審議会資料, 2020)

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(8)モデル実験の比較

 データセット2022の大気予測データ(力学的ダウンスケーリング)のうち、力学的DS手法を用いて行われた全球モデル実験のデータセット (①、③~⑤に含まれる全球のデータ。以下、力学的DSデータセット)間の比較を行う。 これらのデータセットは、日本域のダウンスケーリング実験で用いられる側方境界条件を与える点で、その性質を把握しておくことは重要である。
 2021年8月に公表されたIPCC AR6は、最新のCMIP6のマルチモデルの結果をもとに記述されている。 他方で「(2)気候予測データセット2022の概要」で述べられている通り、 CMIP5で用いられた排出シナリオ、CMIP5のマルチモデルで予測された将来の海面水温等を利用した実験をもとに、力学的DSデータセット実験は構成されている。 CMIP5とは実験設定が異なるCMIP6マルチモデルによる将来予測の中で、 CMIP5の結果を利用した力学的DSデータセットの将来予測がどのように位置づけられるかについて把握しておくことは、 これらのデータセットを用いて、気候の将来予測をするにも、影響評価を行うにも、必須の要件である。
 ここでは、年平均気温と年降水量について、力学的DSデータセットの高解像度実験(①「全球及び日本域気候予測データ」)、 マルチシナリオ・マルチ物理実験(③「マルチシナリオ・マルチ物理予測データ」)、150年連続実験(④「全球及び日本域150年連続実験データ」)、 d4PDF(⑤「全球及び日本域確率的気候予測データ(d4PDFシリーズ)」)に含まれる全球の予測と、CMIP5、CMIP6マルチモデルによる将来予測変化の比較を行った。 比較は現在気候(1982-2003年)と将来気候(①、③、④は2076-2095年、⑤は2084~2103年)で行い、 対象領域は5kmのダウンスケーリング実験の領域と同じである(図8.1のJPN)。

図8.1

図8.1

図8.1 全球モデルMRI-AGCM3.2とCMIP5/6マルチモデルアンサンブルとの比較対象とした領域
青色部分は日本付近(JPN)の領域(海上を含む)で、高解像度実験(5km解像度。①「全球及び日本域気候予測データ」、 ②「日本域気候予測データ」)と同じ範囲である。 赤の矩形領域は、IPCCで使用されている「東アジア地域(EAS。IPCC(2012)図3-1より)」(海上は含まない)である(Ito et al., 2020b)。

① 年平均気温

 RCP8.5の実験においては、力学的DSデータセットいずれの実験も4℃上昇程度で、CMIP5の平均値とほぼ一致するが、CMIP6と比較すると、0.6℃ほど低めとなる。 ただし、この解析では、高気候感度(Tokarska et al., 2020; Shiogama et al., 2021)とされるモデルも含めてCMIP6マルチモデルの全てを利用している。 力学的DSデータセットのうち、RCP8.5での不確実性の幅は、大きい順にCMIP5の複数モデルによる予測をもとに作成された海面水温(SST)昇温パターンにより、 不確実性を表現しているd4PDF、複数のSST昇温パターンと複数の積雲スキームによる不確実性を表現するマルチシナリオ・マルチ物理実験、高解像度実験となる。 不確実性の幅は、CMIP6による不確実性の幅のおよそ20-50%の部分に相当する(図8.2)。RCP2.6では、力学的DSデータセットの実験が平均1.2℃上昇程度に対して、 CMIP6マルチモデル実験の平均は2℃上昇と大きな差がある。この理由も、上述の気候感度の高いモデルが含まれていることが挙げられる。 マルチシナリオ・マルチ物理実験での複数の積雲スキームによる不確実性の幅と、高解像度実験の複数のSSTパターンによる不確実性の幅は、 いずれもCMIP6による不確実性の幅のおよそ5-25%の部分に相当する。
 気候予測の不確実性の幅は、シナリオの不確実性、自然変動による不確実性、モデルの不確実性から構成されており、必ずしも小さいことが良いという訳ではない。 現在の科学的知見から、これらが適切に予測に反映されている必要がある。なお、150年連続実験では、各実験のアンサンブルサイズが1のため、 不確実性の幅を描けていない。

図8.2

図8.2

図8.2 異なる将来予測実験間の年平均気温の比較。
(a) RCP2.6、(b) RCP4.5、(c) RCP6.0、(d) RCP8.5に基づく予測。各パネルの左側は力学的DSデータセットの将来予測を、 右側はCMIP5、CMIP6の将来予測を表している。 左側パネルの横軸において、d4PDFは⑤「全球及び日本域確率的気候予測データ(d4PDFシリーズ)」、 Multiはマルチシナリオ・マルチ物理実験(③「マルチシナリオ・マルチ物理予測データ」)、 150yearは150年連続実験(④「全球及び日本域150年連続実験データ」)、 Hi-Res20は高解像度実験(①「全球及び日本域気候予測データ」)である。 CMIP5とCMIP6モデルの結果は、箱ひげ図で示され、下から、最小値、10パーセンタイル値、25パーセンタイル値、平均値、 75パーセンタイル値、90パーセンタイル値、最大値を表している。 RCP8.5条件の150年連続実験にある紫の×印は20km解像度の結果を表している。 ほぼ同じ値となっている60km解像度の結果を示す黒の×印は20km解像度の結果に重なって見えていない。 環境省環境研究総合推進費S-15の共通利用シナリオの1つ、⑬「日本域CMIP6データ(NIES2020)」で利用されているCMIP6の5モデル(各パネル右側)は、 MIROC6(赤)、MRI-ESM2.0(赤)、ACCESS-CM2(青)、IPSL-CM6A-LR(青)、MPI-ESM1-2-HR(青)である。 図の下に並ぶ4モデルは、環境省環境研究総合推進費S-8の共通シナリオで用いられたCMIP5の4モデルを表している。 現在気候は1980~1999年、将来気候は2076~2095年(d4PDF以外)とした。d4PDFは将来気候を2084~2103年とすることで、 年々変動を現在と将来の間で一致させている。

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② 年降水量

 150年連続実験を除く力学的DSデータセットと、CMIP6シナリオ実験データセットの平均値の将来変化はほぼ同じ値で、 RCP8.5でおよそ7%、RCP2.6でおよそ5%増である。150年連続実験のみ、どのRCP実験でも変化がほとんど無い。 RCP8.5における不確実性の幅の大きさについては、気温と同様の順番である。 d4PDFでは、CMIP6マルチモデルアンサンブルの不確実性の幅のおよそ5-75%を、 マルチシナリオ・マルチ物理実験では10-60%、高解像度実験ではおよそ15-50%を表現している。 RCP2.6でも不確実性の幅はRCP8.5と同様である。 d4PDFとマルチシナリオ・マルチ物理実験では、若干平均値より小さい増加を多く含むが、 平均値を含んだ不確実性の幅となっている一方、高解像度実験では、平均値以下の範囲での不確実性の幅を表現している。

図8.3

図8.3

図8.3 図8.2に同じ。ただし、年降水量の比較。

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③ 統計的ダウンスケーリングデータセット

 環境省環境研究総合推進費S-18などの影響評価研究では、統計的DS手法を用いたS-8共通シナリオ、 ⑪「日本域農研機構データ(NARO2017)」、⑬「日本域CMIP6データ(NIES2020)」(Ishizaki et al., 2020)などが用いられている。 日本域CMIP6データは、3つのSSPにわたり、最小のモデル数で、将来予測の十分な不確実性の幅を捉えられる5つのCMIP6モデルを選定し (Shiogama et al., 2021)、統計的ダウンスケーリングにより作成されている。 CMIP6モデルの選定にあたっては、影響評価モデルで利用される地上気象要素を選定基準に用いているにもかかわらず、 循環場からみても、適切な不確実性の幅を持っていることが確かめられている(Ose et al., 2022)。 図8.2、図8.3から各RCPで、5つのCMIP6モデルによってCMIP6マルチモデルの不確実性の幅を年平均気温、年降水量でともに、 良く捉えていることが分かる。

 このように、データセット2022に収録されているデータでの不確実性の幅は、CMIP6と比較して変数ごと、 データセットごとに異なる性質を持つので、利用に際しては、留意する必要がある。
 なお、データセット2022の一部データの作成に用いられているMRI-AGCM3.2とCMIP5の将来気候変化との比較については、 『「日本の気候変動2020」 (詳細版)』 (文部科学省・気象庁, 2020)の 付録1.5と付録3.2に記載されている。 より詳細にはIto et al.(2020a,b)を参照されたい。

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(10)用語説明

アンサンブル計算 予測計算の際に気候モデルに与える初期値や境界値(陸面や海面等)等のデータを確からしい様々な条件のもとで計算させ、 将来予測の不確実性の把握、低減を試みる手法。気候モデルの不確実性をカバーするため、 複数のモデルの予測結果の平均等を用いることを、マルチモデルアンサンブルという。
温暖化レベル 産業革命以前と比較した全球地表気温の上昇量(例えば、1.5℃上昇、2℃上昇、4℃上昇等)。
21世紀気候変動予測
革新プログラム(革新P)
文部科学省により平成19年度~平成23年度に実施された気候変動予測研究プログラム。
https://www.jamstec.go.jp/kakushin21/jp/
環境研究総合推進費S-8 環境省により平成22年度~平成26年度に実施された影響評価や適応に関する研究プロジェクト (温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究(S-8))。
https://www.nies.go.jp/s8_project/
環境研究総合推進費S-18 環境省により令和2年度~令和6年度にわたって実施されている影響評価や適応に関する研究プロジェクト (気候変動影響予測・適応評価の総合的研究(S-18))。
https://s-18ccap.jp/
気候変動適応技術
社会実装プログラム(SI-CAT)
文部科学省により平成27年度~令和元年度に実施された気候変動予測研究から影響評価、 社会実装までを一気通貫に実施することを目的としたプログラム。
https://www.restec.or.jp/si-cat/
気候変動リスク
情報創生プログラム(創生P)
文部科学省により平成24年度~平成28年度に実施された気候変動予測研究プログラム。
https://www.jamstec.go.jp/sousei/
気候モデル、全球モデル、領域モデル 大気、海洋、陸面等の挙動を物理法則に従ってプログラム上で表現したものは、一般に数値予報モデルと呼ばれる。 数値予報モデルは日々の天気予報等でも用いられているが、特に気候予測のために用いられるモデルを本書では気候モデルと呼ぶ。 また本書では、気候モデルのうち、地球規模での計算をするものを全球モデル、 日本域等の特定領域で計算するものを領域モデルと呼ぶ。
タイムスライス実験 現在から21世紀末までにかけて、連続的に予測計算を行ったものではなく、特定の期間を対象に予測計算を行った将来予測実験のことをいう。
ダウンスケーリング(DS) 全球モデル等から得られる予測データから、より細かいスケールを解像できる水平解像度が数kmメッシュ程度の高解像度な予測データを得る手法。 詳しくは「(3)力学的ダウンスケーリングと統計的ダウンスケーリングについて」を参照されたい。
超過確率、非超過確率 例えば、ある地点の年最大時間降水量の確率分布を考えた場合、その確率分布において、Xmm/hourを超える確率を超過確率、 超えない確率を非超過確率という。
統合的気候モデル
高度化研究プログラム(統合P)
文部科学省により平成29年度~令和3年度に実施された気候変動予測研究プログラム。
https://www.jamstec.go.jp/tougou/
バイアス 系統的な誤差。気候モデルによる予測結果には、そのモデル特有のバイアスが含まれる。 例えば、気候モデルによっては、日本列島の日本海側では冬季に多量の降雪があるが、その降雪量が現実よりも少なく表現される場合がある。
パラメタリゼーション モデルの格子スケールよりも小さく解像できない現象の影響を、その格子の物理量を用いて表現すること。
連続実験 現在から21世紀末までにかけて、連続的に予測計算を行ったものをいう。
ACCESS-CM2 オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)やオーストラリア気候変動研究センター(ARCCSS)、オーストラリア気象局(BoM)により開発された気候モデル。
CMIP 結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP)は、世界気候研究計画(WCRP)が進める気候モデルの国際比較プロジェクトである。 IPCCにより作成される評価報告書(AR)のサイクルと連動しており、第5次評価報告書(AR5)では第5期(CMIP5)、 第6次評価報告書(AR6)では第6期(CMIP6)の気候予測データが評価に主に用いられた。 詳しくは、「(5)CMIP5とCMIP6の関係性(AR5とAR6、コアシナリオ等)」を参照されたい。
CSIRO-Mk-3-6 オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)により開発された気候モデル。
ESGF Earth System Grid Federation(ESGF)は、CMIPデータの収集・配信等を目的とするデータプラットフォーム。 日本では、データ統合・解析システム( DIAS )がデータノードの一角として参画している。
GFDL-CM3 米国海洋大気庁地球流体力学研究所(NOAA/GFDL)により開発された気候モデル。
HadGEM2-ES 英国気象局ハドレーセンターにより開発された気候モデル。
HighResMIP CMIP6を構成する実験群の1つで、高解像度モデル比較プロジェクト(HighResMIP)のこと。
IPCC 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、世界気象機関(WMO)及び国連環境計画(UNEP)により1988年に設立された政府間組織。 IPCCの目的は、各国政府の気候変動に関する政策に科学的な基礎を与えることである。 世界中の科学者の協力のもと、出版された文献(科学誌に掲載された論文等)に基づいて定期的に報告書を作成し、 気候変動に関する最新の科学的知見の評価を提供している。
IPSL-CM6A-LR ピエール・シモン・ラプラス研究所気候モデルセンター(フランス)により開発された気候モデル。
MPI-ESM1-2-HR マックスプランク研究所(ドイツ)により開発された気候モデル。
MIROC5 東京大学、国立環境研究所、海洋研究開発機構の共同により開発された気候モデル。
MRI-AGCM3.2 気象庁気象研究所により開発された気候モデル(大気モデル)。
MRI-CGCM3 気象庁気象研究所により開発された気候モデル(大気と海洋を結合して計算する大気海洋結合モデル。 海洋と結合させていないモデルが、大気モデルのMRI-AGCM)。
MRI-ESM2.0 気象庁気象研究所により開発された気候モデル(地球システムモデル)。
SSP IPCC第6次評価報告書に向けて作られた社会経済シナリオが共通社会経済経路(Shared Socioeconomic Pathways, SSP)である。 詳しくは、「(5)CMIP5とCMIP6の関係性(AR5とAR6、コアシナリオ等)」を参照されたい。
SRESシナリオ IPCC第4次評価報告書で採用された温室効果ガス排出シナリオで、 IPCCの「排出シナリオに関する特別報告書(SRES:Special Report on Emissions Scenarios)」により2000年に発表された。 SRESシナリオでは、将来の社会経済像がA1シナリオ(高成長型社会シナリオ)、A2シナリオ(多元化社会シナリオ)、 B1シナリオ(持続発展型社会シナリオ)、B2シナリオ(地域共存型社会シナリオ)に分類された。 A1シナリオはA1FI(化石エネルギー源を重視)、A1T(非化石エネルギー源を重視)、 A1B(各エネルギー源のバランスを重視)にさらに細分化されている。
RCP IPCC第5次評価報告書で採用された温室効果ガス排出シナリオが代表的濃度経路 (Representative Concentration Pathways, RCP)である。 詳しくは、「(5)CMIP5とCMIP6の関係性(AR5とAR6、コアシナリオ等)」を参照されたい。

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(資料1)

気候予測データセット社会実装の全体像(概要)

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(資料2)

気候予測データセット2022関係図



記号 意味
上のデータから下のデータに向けてダウンスケーリングしたことを示す
力学的ダウンスケーリング
統計的ダウンスケーリング(バイアス補正を含む)
バイアス補正や台風トラック、低気圧の抽出等、データを解析したことを示す

章をたたむ

(資料3)

気候予測データセット2022カタログ(詳細)

大気予測(力学的ダウンスケーリング)

番号 予測データ モデル 排出
シナリオ
空間
解像度
時間
解像度
メンバ数 主な変数 データ形式/
データ期間
連続計算 バイアス補正 備考 開発機関
関連事業
作成年※
全球及び日本域気候予測データ MRI-AGCM3.2
(気象研)
過去
RCP2.6
RCP8.5
20km 1日/6時間
/1か月*
4
4
4
気温(最低、最高、平均)、降水、日射量、風速、湿度、積雪、積雪水量 GrADS形式
バイナリ/
GRIB

1979-2003,
2075-2099
・21世紀末のタイムスライス実験
・過去実験のメンバ数は初期値アンサンブル、RCP実験はマルチSSTアンサンブル
・利用上の留意事項あり(詳細は解説書第2章参照)
気象研、気象業務支援センター

創生P、
統合P

2021年
NHRCM
(気象研)
5km/
2km
1時間# GRIB2/
バイナリ(圧縮)

1980-1999,
2076-2095
日本域気候予測データ NHRCM
(気象研)
過去
RCP2.6
RCP8.5
5km/
2km
日、月、年 1
4
4
気温(最低、最高、平均、階級別日数)、降水(降水量、階級別日数等)、積雪・降雪 バイナリ
(格子点)/
CSV(観測地点)

1980-1999, 2076-2095
有(一部要素) ・①の一部要素について統計処理等を行ったデータ。階級別日数等は観測地点でバイアス補正
・利用上の留意事項あり(詳細は解説書第2章参照)
気象庁・気候情報課

気象庁業務(創生P、統合Pのデータを利用)

2022年
マルチシナリオ・マルチ物理予測データ MRI-AGCM3.2
(気象研)
過去RCP2.6
RCP4.5
RCP6.0
RCP8.5
60km 1日/6時間/1か月* 3
3
3
3
9
気温(最低、最高、平均)、降水、日射量、風速、湿度、積雪、積雪水量 GrADS形式バイナリ

1983-2003,
2079-2099
・将来実験のアンサンブル数3はマルチSSTアンサンブル、9はマルチ積雲×マルチSSTアンサンブル
・利用上の留意事項あり(詳細は解説書第2章参照)
気象研

環境省事業†

2014年
NHRCM
(気象研)
20km 1時間
全球及び日本域150年連続実験データ MRI-AGCM3.2
(気象研)
過去~
RCP2.6
RCP4.5
RCP6.0
RCP8.5
60km 1日/6時間/1か月* 1
1
1
1
気温(最低、最高、平均)、降水、日射量、風速、湿度、積雪、積雪水量 GrADS形式
バイナリ/
GRIB

1950-2099
・20世紀後半から21世紀末まで150年連続実験
・過去実験はRCP2.6-8.5の各シナリオで初期値が異なる
・全球、RCP8.5のみ20km実験あり
・利用上の留意事項あり(詳細は解説書第2章参照)
気象業務支援センター

統合P

2021年
NHRCM
(気象研)
20km 1時間 GRIB

1950-2098

* MRI-AGCM3.2(全球)は共通で気温(最低、最高、平均)は1日、降水、風速、湿度は6時間、日射量、積雪、積雪水量は1か月
# NHRCM(日本域)の気温、降水、日射量、風速、湿度は5kmで30分、2kmで1時間、積雪、積雪水量はいずれも1時間
† 「平成25年度環境省地球温暖化影響の理解のための気候変動予測等実施委託業務」及び「平成26年度環境省地球温暖化影響の理解のための気候変動予測等実施委託業務」

※ 作成年
「データセット作成」を「データ自体の作成」及び「記述論文や解説書等の整備」と定義し、
・ 記述論文の出版年を記載(もし一つの項目に作成年の異なるデータがある場合は、最も新しい年を記載)
・ 記述論文のないデータセットについては、当該データセットの解説書の作成年を記載
・ データセット2022解説書公表時点で論文も解説書もない場合は、データセット2022解説書の作成でデータセット作成が完了したとみなし、作成年を2022年と記載

番号 予測データ モデル 排出
シナリオ
空間
解像度
時間
解像度
メンバ数 主な変数 データ形式/
データ期間
連続計算 バイアス補正 備考 開発機関
関連事業
作成年※
全球及び日本域確率的気候予測データ(d4PDFシリーズ) MRI-AGCM3.2
(気象研)
過去
1.5℃上昇
2℃上昇(RCP8.5の今世紀半ば)
4℃上昇
(RCP8.5)
60km 1日/6時間/1か月* 100
54
54
90
気温(最低、最高、平均)、降水、日射量、風速、湿度、積雪、積雪水量 GrADS形式
バイナリ/
GRIB

1951-2010,
+1.5℃
(30年),
+2℃
(60年),
+4℃
(60年)
・極端現象のような低頻度の現象の評価が可能
・メンバは初期値アンサンブルで構成
・d4PDF、d2PDF、d1.5PDF
・利用上の留意事項あり(詳細は解説書第2章参照)
気象研、気象業務支援センター、京都大学等

創生P、
SI-CAT、
統合P

2019年
NHRCM
(気象研)
20km 1時間 50
54
54
90
北海道域d4PDFダウンスケーリングデータ NHRCM
(気象研)
過去
2℃上昇(RCP8.5の今世紀半ば)
4℃上昇
(RCP8.5)
5km 30分 50
54
90
降水、気温、風速、湿度 netCDF

⑤のデータ期間(+1.5℃除く)の各年最大の大雨イベントを対象とした15日間
・極端現象のような低頻度の現象の評価が可能
・利用上の留意事項あり(詳細は解説書第2章参照)
北海道大学

SI-CAT、統合P

2022年
本州域
d4PDFダウンスケーリングデータ
NHRCM
(気象研)
過去
2℃上昇(RCP8.5の今世紀半ば)
4℃上昇
(RCP8.5)
5km
※1kmの極端事象(豪雪他)
1時間 12
12
12
気温(最低、最高、平均)、降水、日射量、風速、湿度、積雪、積雪水量 GrADS形式バイナリ

1980-2011,
+2℃(31年),
+4℃(31年)
・極端現象のような低頻度の現象の評価が可能
・利用上の留意事項あり(詳細は解説書第2章参照)
東北大学

SI-CAT、統合P

2021年
日本域
台風予測データ
CReSS
(名古屋大)
過去
RCP8.5




過去
SRES A1B
4km





2km
1時間 1 地表面要素(1時間毎):海面気圧、降水、10m風速 バイナリ(ビッグエンディアン)

計400程度の各台風につき2~7日間。詳細は解説書第2章参照
・日本の東海上を上陸することなく北上し、北海道に上陸した台風を対象に過去実験、4℃実験でそれぞれ約100例ずつ
・各気候25年間において北太平洋西部を北上する60事例余りの台風
・利用上の留意事項あり(詳細は解説書第2章参照)
名古屋大学

創生P、
統合P

2022年
全球
d4PDF台風トラックデータ
MRI-AGCM3.2
(気象研)
過去
4℃上昇
(RCP8.5)
60km 6時間 100
90
時間、緯度、経度、中心気圧、最大風速 netCDF

1951-2010,
2051-2110
内の台風事例
・補足データ(⑤をもとに行った解析データ)
・台風に関連する影響評価の解析に活用可能
・利用上の留意事項あり(詳細は解説書第2章参照)
京都大学、気象業務支援センター

統合P

2019年
日本域
d4PDF低気圧
データ
MRI-AGCM3.2
(気象研)
過去
4℃上昇
(RCP8.5)
20km 6時間 50
90
時間、緯度、経度、中心気圧 netCDF

1951-2010,
2051-2110
内の急速に発達する低気圧事例
・補足データ(⑤をもとに行った解析データ)
・急速に発達する低気圧に関するデータ。例えば、冬季におけるこれらの低気圧等の影響評価に活用可能
・利用上の留意事項あり(詳細は解説書第2章参照)
京都大学、金沢大学

統合P

2019年

※ 作成年
「データセット作成」を「データ自体の作成」及び「記述論文や解説書等の整備」と定義し、
・ 記述論文の出版年を記載(もし一つの項目に作成年の異なるデータがある場合は、最も新しい年を記載)
・ 記述論文のないデータセットについては、当該データセットの解説書の作成年を記載
・ データセット2022解説書公表時点で論文も解説書もない場合は、データセット2022解説書の作成でデータセット作成が完了したとみなし、作成年を2022年と記載

【以下の⑯は令和6年3月に追加】

番号 予測データ モデル 排出
シナリオ
空間
解像度
時間
解像度
メンバ数 主な変数 データ形式/
データ期間
連続計算 バイアス補正 備考 開発機関
関連事業
作成年※
全国版d4PDF
ダウンスケーリングデータ
NHRCM
(気象研)
過去
2℃上昇
(RCP8.5の今世紀半ば)
4℃上昇
(RCP8.5)
5km 1時間
(2次元データ)、
6時間
(3次元気圧面データ)、
日データ
12
12
12
気温(最低、最高、平均)、降水、日射量、風速、湿度、積雪、積雪水量 netCDF

1951-2011,
+2℃(61年),
+4℃(61年)
・極端現象のような低頻度の現象の評価が全国一律の基準で可能
・利用上の留意事項あり(詳細は解説書第2章参照)
気象研

気候変動予測先端研究プログラム

2023年

※ 作成年
「データセット作成」を「データ自体の作成」及び「記述論文や解説書等の整備」と定義し、
・ 記述論文の出版年を記載(もし一つの項目に作成年の異なるデータがある場合は、最も新しい年を記載)
・ 記述論文のないデータセットについては、当該データセットの解説書の作成年を記載
・ データセット2022解説書公表時点で論文も解説書もない場合は、データセット2022解説書の作成でデータセット作成が完了したとみなし、作成年を2022年と記載

大気予測(統計的ダウンスケーリング)

番号 予測データ モデル 排出
シナリオ
空間
解像度
時間
解像度
メンバ数 主な変数 データ形式/
データ期間
連続計算 バイアス補正 備考 開発機関
関連事業
作成年※
日本域
農研機構データ
(NARO2017)
#1 過去
RCP2.6
RCP8.5
1km 日別値 気温(最低、最高、平均)、降水、日射量、風速、湿度 netCDF

1981-2100
・20世紀後半から21世紀末まで
・利用上の留意事項あり(詳細は解説書第2章参照)
農研機構

SI-CAT

2019年
日本域
CMIP5データ(NIES2019)
#2 過去
RCP2.6
RCP8.5
1km 日別値 気温(最低、最高、平均)、降水、日射量、風速、湿度 netCDF

1900-2100
・20世紀初めから21世紀末まで
・1980-2018年の観測値を用いて1km格子でバイアス補正した
・利用に際した留意事項あり(詳細は解説書第2章参照)
国環研

国環研事業†(革新Pの気候予測情報を一部利用)

2020年
日本域
CMIP6データ
(NIES2020)
#3 過去
SSP1-2.6
SSP2-4.5 SSP5-8.5
1km 日別値 気温(最低、最高、平均)、降水、日射量、風速、湿度、長波放射 netCDF

1900-2100
・20世紀初めから21世紀末まで
・1980-2018年の観測値を用いて1km格子でバイアス補正した
・利用に際した留意事項あり(詳細は解説書第2章参照)
国環研

国環研事業‡(統合Pの気候予測情報を一部利用)

2021年

#1 MIROC5(東大・JAMSTEC・国環研)、MRI-CGCM3(気象研)、GFDL CM3(米)、HadGEM2-ES(英)、CSIRO-Mk-3-6(豪)
#2 MIROC5(東大・JAMSTEC・国環研)、MRI-CGCM3(気象研)、GFDL CM3(米)、HadGEM2-ES(英)
#3 MIROC6(東大・JAMSTEC・国環研)、MRI-ESM2.0(気象研)、ACCESS-CM2(豪)、IPSL-CM6A-LR(仏)、MPI-ESM1-2-HR(独)
† 国環研第4期中期計画・気候変動適応プログラム
‡ 国環研第5期中期計画・気候変動適応プログラム

※ 作成年
「データセット作成」を「データ自体の作成」及び「記述論文や解説書等の整備」と定義し、
・ 記述論文の出版年を記載(もし一つの項目に作成年の異なるデータがある場合は、最も新しい年を記載)
・ 記述論文のないデータセットについては、当該データセットの解説書の作成年を記載
・ データセット2022解説書公表時点で論文も解説書もない場合は、データセット2022解説書の作成でデータセット作成が完了したとみなし、 作成年を2022年と記載

海洋予測(力学的ダウンスケーリング)

番号 予測データ モデル 排出
シナリオ
空間
解像度
時間
解像度
メンバ数 主な変数 データ形式/
データ期間
連続計算 バイアス補正 備考 開発機関
関連事業
作成年※
日本域
海洋予測データ
MRI.COM
v4
(気象研)
過去
RCP8.5
RCP2.6
2km
10km
・10kmは、月平均または日平均
・2kmは、日平均または時間平均
2
2
2
海水温、海流、海面水位、植物プランクトン量、動物プランクトン量、栄養塩、酸性度 netCDF

・2km
1991-2005, 2041-2055 (RCP8.5のみ), 2086-2100

・10km
1970-2100
・10kmは、20世紀後半から21世紀末まで100年以上連続実験、外力はMIROC5、MRI-CGCM3(物理変数はGFDL-ESM2M、IPSL-CM5A-MRもあり)
・2kmは、21世紀末のタイムスライス実験、外力は10kmデータと同じ
・利用上の留意事項あり(詳細は解説書第2章参照)
JAMSTEC

SI-CAT、統合P

2022年
全球及び日本域
波浪予測データ
WaveWatchIII
(米)
過去
RCP8.5
RCP2.6
6km
15km
60km
1時間 3
4
1
波高、周期、波向 netCDF

1979-2003,
2075-2099
・加工データ#
・各気候25年間における時間空間データ
・外力とした気候モデルはMRI-AGCM(気象研)
・WaveWatchIIIはNOAA開発のスペクトル型波浪モデル
・防災対策で活用
・利用上の留意事項あり(詳細は解説書第2章参照)
京都大学

統合P

2017年

# 気候変動予測モデルから創出されたデータをもとに物理モデルで解析したもの

※ 作成年
「データセット作成」を「データ自体の作成」及び「記述論文や解説書等の整備」と定義し、
・ 記述論文の出版年を記載(もし一つの項目に作成年の異なるデータがある場合は、最も新しい年を記載)
・ 記述論文のないデータセットについては、当該データセットの解説書の作成年を記載
・ データセット2022解説書公表時点で論文も解説書もない場合は、データセット2022解説書の作成でデータセット作成が完了したとみなし、作成年を2022年と記載

章をたたむ

(資料3付録)

気候予測データセット2022カタログ(計算範囲)

大気予測(力学的ダウンスケーリング)

① 全球及び日本域気候予測データ

全球及び日本域気候予測データ

全球及び日本域気候予測データ

画像をクリック後マウスホイールで拡大できます

気象研究所全球大気モデル(MRI-AGCM3.2)を用いた全球及び気象研究所非静力学地域気候モデル(NHRCM)を用いた5km/2kmの格子間隔の日本域の計算範囲を示す

② 日本域気候予測データ

日本域気候予測データ

日本域気候予測データ

黄色と青色の領域が予測結果の掲載範囲を示す
解析に用いた「① 全球及び日本域気候予測データ」のうち、NHRCM05/02の計算結果から、「5km版」では東西南北30格子、「2km版」では東西南北20格子を、額縁領域としてそれぞれ設定しており、その領域については日本域予測データセットでは除外している。ここで示しているのは、その額縁領域を除いた範囲

③ マルチシナリオ・マルチ物理予測データ/④ 全球及び日本域150年連続実験データ/
⑤ 全球及び日本域確率的気候予測データ(d4PDFシリーズ)

気象研究所全球大気モデル(MRI-AGCM3.2)を用いた全球及び気象研究所非静力学地域気候モデル(NHRCM)を用いた20kmの格子間隔の日本域の計算範囲を示す

⑥ 北海道域d4PDFダウンスケーリングデータ

右の図の着色領域がデータの計算範囲を示す
左:外側の実線がd4PDF領域実験(20km)の計算対象領域(「⑤全球及び日本域確率的気候予測データ」の日本域と同じ)、 内側の実線が5kmへのダウンスケーリングの対象領域
右:着色範囲は5kmへのダウンスケーリングの対象領域、太実線は十勝川帯広基準地点流域

⑦ 本州域d4PDFダウンスケーリングデータ

内枠の領域がデータの計算範囲を示す
外枠(太線):d4PDF領域実験(20km)の計算対象領域(「⑤全球及び日本域確率的気候予測データ」の日本域と同じ)。枠内の濃淡は標高を表す

⑧ 日本域台風予測データ

水平解像度4km相当(CReSS04)及び2km相当(CReSS02)のデータの計算範囲を示す
破線:CReSS04(日本付近を北上する台風)
太実線:CReSS02(日本へ北上する台風)

⑨ 全球d4PDF台風トラックデータ

地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース(「⑤全球及び日本域確率的気候予測データ(d4PDFシリーズ)」の全球モデル実験)から 台風トラッキングアルゴリズムを用いて抽出した全世界の熱帯低気圧情報
計算範囲:全球の熱帯低気圧をカバー

⑩ 日本域d4PDF低気圧データ

地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース(「⑤全球及び日本域確率的気候予測データ(d4PDFシリーズ)」の領域モデル実験)から 客観的低気圧トラッキングアルゴリズムを用いて抽出した爆弾低気圧情報
計算範囲:おおよそ東経115度から155度、北緯20度から50度

⑯ 全国版d4PDFダウンスケーリングデータ (※令和6年3月に追加)

内枠の領域がデータの計算範囲を示す
外枠(太線):d4PDF領域実験(20km)の計算対象領域(「⑤全球及び日本域確率的気候予測データ」の日本域と異なる)

大気予測(統計的ダウンスケーリング)

⑪ 日本域農研機構データ(NARO2017)

灰色で示した領域が、日本域農研機構データ(NARO2017)の計算範囲(「農研機構メッシュ農業気象データ」と同一)を示す

⑫ 日本域CMIP5データ(NIES2019)/⑬日本域CMIP6データ(NIES2020)

灰色で示した領域が、日本域CMIP5データ(NIES2019)及び日本域CMIP6データ(NIES2020)の計算範囲を示す

海洋予測(力学的ダウンスケーリング)

⑭ 日本域海洋予測データ

(a)の黒破線が解像度10kmのデータ、(b)の黒破線が解像度2kmのデータの計算範囲を示す
(a) パネルで示す領域はNPモデルの領域を示す。シェードは海底の深さ(単位は m)。赤線はJPNモデルの領域を示し、黒破線はFOPR-NP10 ver4の日平均データの領域を示す
(b) パネルで示す領域はJPNモデルの領域を示す。シェードは海底の深さ(単位は m)。黒破線はFOPR-JPN02 ver4の1時間平均データの領域を示す

⑮ 全球及び日本域波浪予測データ

気候変動に伴う全球及び日本域波浪変化予測データセットの計算範囲
(上図)全世界領域(空間解像度60km)、(左下図)北西太平洋領域(15km)、(右下図)日本近海領域(6km)

章をたたむ

【参考文献】

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  • Iizumi, T., Y. Masutomi, T. Takimoto, T. Hirota, A. Yatagai, K. Tatsumi, K. Kobayashi and T. Hasegawa, 2018a: Emerging research topics in agricultural meteorology and assessment of climate change adaptation. J. Agric. Meteor., 74, 54–59.
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  • Mori, N., N. Ariyoshi, T. Shimura, T. Miyashita and J. Ninomiya, 2021a: Future projection of maximum potential storm surge height at three major bays in Japan using the maximum potential intensity of a tropical cyclone. Climatic Change, 164, doi:10.1007/s10584-021-02980-x.
    https://link.springer.com/article/10.1007/s10584-021-02980-x
  • Mori, N. and T. Takemi, 2016: Impact assessment of coastal hazards due to future changes of tropical cyclones in the North Pacific Ocean. Wea. Clim. Extremes, 11, 53–69.
    https://doi.org/10.1016/j.wace.2015.09.002
  • Mori, N., T. Takemi, Y. Tachikawa, H. Tatano, T. Shimura, T. Tanaka, T. Fujimi, Y. Osakada, A. Webb and E. Nakakita, 2021b: Recent nationwide climate change impact assessments of natural hazards in Japan and East Asia (review), Wea. Clim. Extremes, 32, 100309, doi:10.1016/j.wace.2021.100309.
    https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2212094721000074
  • Morim, J., M. Hemer, X. L. Wang, N. Cartwright, C. Trenham, A. Semedo, I. Young, L. Bricheno, P. Camus, M. Casas-Prat, L. Erikson, L. Mentaschi, N. Mori, T. Shimura, B. Timmermans, O. Aarnes, Ø. Breivik, A. Behrens, M. Dobrynin, M. Menendez, J. Staneva, M. Wehner, J. Wolf, B. Kamranzad, A. Webb, J. Stopa, F. Andutta, 2019: Robustness and uncertainties in global multivariate wind-wave climate projections, Nat. Clim. Change, 9, 711-718.
    https://doi.org/10.1038/s41558-019-0542-5
  • Ninomiya, J., Y. Taka and N. Mori, 2021: Projecting changes in explosive cyclones and high waves around Japan using a mega-ensemble projection. Ocean Eng., 237, 109634, doi:10.1016/j.oceaneng.2021.109634.
    https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S002980182101012X
  • Orlanski, I., 1975: A rational subdivision of scales for atmospheric processes. Bull. Amer. Meteor. Soc., 56, 527–530.
    https://doi.org/10.1175/1520-0477-56.5.527
  • Ose, T., H. Endo, Y. Takaya, S. Maeda and T. Nakaegawa, 2022: Robust and uncertain sea-level pressure patterns over summertime East Asia in the CMIP6 multi-model future projections. J. Meteor. Soc. Japan., 100, 631–645.
    https://doi.org/10.2151/jmsj.2022-032
  • Prein, A. F., R. M. Rasmussen, D. Wang and S. E. Giangrande, 2021: Sensitivity of organized convective storms to model grid spacing in current and future climates. Phil. Trans. R. Soc. A, 379: 20190546.
    https://doi.org/10.1098/rsta.2019.0546
  • Shimura, T., N. Mori and M. A. Hemer, 2017: Projection of tropical cyclone-generated extreme wave climate based on CMIP5 multi-model ensemble in the Western North Pacific. Clim. Dyn., 49, 1449–1462.
    https://doi.org/10.1007/s00382-016-3390-2
  • Shiogama, H., N. N. Ishizaki, N. Hanasaki, K. Takahashi, S. Emori, R. Ito, T. Nakaegawa, I. Takayabu, Y. Hijioka, Y. N. Takayabu and R. Shibuya, 2021: Selecting CMIP6-based future climate scenarios for impact and adaptation studies. SOLA, 17, 57–62.
    https://doi.org/10.2151/sola.2021-009
  • Takayabu, I. and K. Hibino, 2016: The skillful time scale of climate models. J. Meteor. Soc. Japan, 94A, 191–197.
    https://doi.org/10.2151/jmsj.2015-038
  • Tanaka, T., Y. Tachikawa, Y. Ichikawa and K. Yorozu, 2018: Flood risk curve development with probabilistic rainfall modelling and large ensemble climate simulation data: a case study for the Yodo River basin. Hydrol. Res. Lett., 12, 28–33.
    https://doi.org/10.3178/hrl.12.28
  • Tokarska, K. B., M. B. Stolpe, S. Sippel, E. M. Fischer, C. J. Smith, F. Lehner and R. Knutti, 2020: Past warming trend constrains future warming in CMIP6 models. Sci. Adv., 6, doi:10.1126/sciadv.aaz9549.
    https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aaz9549
  • Watanabe, S., M. Yamada, S. Abe, and M. Hatono, 2020: Bias correction of d4PDF using a moving window method and their uncertainty analysis in estimation and projection of design rainfall depth. Hydrol. Res. Lett., 14, 117–122.
    https://doi.org/10.3178/hrl.14.117
  • Webb, A., T. Shimura and N. Mori, 2019: Global tropical cyclone track detection and analysis of the d4PDF mega-ensemble projection. J. Jpn. Soc. Civ. Eng., Ser. B2 (Coast. Eng.), 75, I_1207–I_1212.
    https://doi.org/10.2208/kaigan.75.i_1207
  • 飯泉 仁之直, 西森 基貴, 石郷岡 康史, 横沢 正幸, 2010: 統計的ダウンスケーリングによる気候変化シナリオ作成入門. 農業気象, 66, 131–143.
    https://doi.org/10.2480/agrmet.66.2.5
  • 石井 正好, 森 信人, 2022: 地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベースの開発と気候変動リスク評価研究成果の社会実装(2021年度岸保・立平賞受賞記念講演). 天気, 69, 413–429.
  • 稲津 將, 佐藤 友徳, 2010: 1. 大は小を兼ねるのか : ダウンスケーリング. 天気, 57, 195–199.
  • 大阪府河川構造物等審議会, 2020: 令和元年度第3回大阪府河川構造物等審議会.
    https://www.pref.osaka.lg.jp/kasenkankyo/kasenkouzoubutu/kakoushin2019.html
  • 小林 敬汰, 田中 智大, 篠原 瑞生, 立川 康人, 2020: d4PDFを用いた日本全国一級水系における極値流量の将来変化分析. 土木学会論文集B1(水工学), 76, 140–152.
    https://doi.org/10.2208/jscejhe.76.1_140
  • SI-CATガイドブック編集委員会, 2020: 気候変動適応技術の社会実装ガイドブック. 技報堂出版, 239pp.
    https://www.restec.or.jp/si-cat/_public/202003/SI-CAT_Social-Implementation_GuideBook.pdf
  • 高藪 出, 金光 正郎, 2010: 力学的ダウンスケーリングのレビュー. 天気, 57, 435–447.
  • 高裕 也, 二宮 順一, 森 信人, 2018: 大規模アンサンブル気候予測データを用いた爆弾低気圧の将来変化. 土木学会論文集B1(水工学), 74, I_175–I_180.
    https://doi.org/10.2208/jscejhe.74.I_175
  • 立川康人, 宮脇航平, 田中 智大, 萬 和明, 加藤 雅也, 市川 温, キム スンミン, 2017: 超多数アンサンブル気候予測実験データを用いた極値河川流量の将来変化の分析. 土木学会論文集B1(水工学), 73, 77–90.
    https://doi.org/10.2208/jscejhe.73.77
  • 田中 智大, 河合 優樹, 立川 康人, 2019: d4PDFによる全国一級水系河川流域の年最大流域平均雨量の再現性評価. 土木学会論文集B1(水工学), 75, I_1135–I_1140.
    https://doi.org/10.2208/jscejhe.75.2_I_1135
  • 時岡 真治, 池内 幸司, 大塚 健太, 魚波 勝彦, 石井 光太郎, 2018: アンサンブル気候予測実験データを用いた適応策としての治水対策の経済的評価. 土木学会論文集B1(水工学), 74, I_1–I_6.
    https://doi.org/10.2208/jscejhe.74.5_I_1
  • 野原 大督, 鈴木 俊亮, 佐藤 嘉展, 2018: 将来の河川流量変化に伴うダム利水操作への影響の評価と適応策に関する基礎的検討. 土木学会論文集B1(水工学), 74, I_85–I_90.
    https://doi.org/10.2208/jscejhe.74.5_I_85
  • 原田 守啓, 丸谷 靖幸, 児島 利治, 松岡 大祐, 中川 友進, 川原 慎太郎, 荒木 文明, 2018: アンサンブル気候変動予測データベースを用いた洪水頻度解析による長良川流域の温暖化影響評価. 土木学会論文集B1(水工学), 74, I_181–I_186.
    https://doi.org/10.2208/jscejhe.74.I_181
  • 星野 剛, 山田 朋人, 2018: 大量アンサンブル気候予測データを用いた年最大降雨の時空間特性の将来変化の把握 ~十勝川流域を対象として~. 土木学会論文集G(環境), 74, I_25–I_31.
    https://doi.org/10.2208/jscejer.74.I_25
  • 星野 剛, 山田 朋人, 稲津 將, 佐藤 友徳, 川瀬 宏明, 杉本 志織, 2018: 大量アンサンブル気候予測データを用いた大雨の時空間特性とその将来変化の分析. 土木学会論文集B1(水工学), 74, I_13–I_18.
    https://doi.org/10.2208/jscejhe.74.5_I_13
  • 舛屋 繁和, 植村 郁彦, 吉田 隆年, 大村 宣明, 千葉 学, 戸村 翔, 山本 太郎, 時岡 真治, 佐々木 博文, 濱田 悠貴, 星野 剛, 山田 朋人, 2018: 実河川流域における大量アンサンブル気候予測データに基づく不確実性を考慮した将来気候下での確率雨量. 土木学会論文集B1(水工学), 74, I_121–I_126.
    https://doi.org/10.2208/jscejhe.74.5_I_121
  • 森元 啓太朗, 2018: マルチ解像度領域気候モデルによるゲリラ豪雨の再現特性の解析及び生起特性の将来変化推定, 京都大学大学院工学研究科修士論文.
  • 文部科学省・気象庁, 2020: 日本の気候変動 2020 — 大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書 —.
    https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ccj/
  • 文部科学省研究開発局, 2021: 統合的気候モデル高度化研究プログラム領域テーマC 統合的気候変動予測 令和2年度研究成果報告書, 312pp.
  • 文部科学省研究開発局, 2022: 統合的気候モデル高度化研究プログラム領域テーマC 統合的気候変動予測 令和3年度研究成果報告書, 454pp.
  • 渡部 哲史, 2020: 気候モデル出力値のバイアス補正(1)特徴に基づく手法の整理. 水文・水資源学会誌, 33, 243–262.
    https://doi.org/10.3178/jjshwr.33.243

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【謝辞】

本解説書第1章の執筆にあたっては、以下の有識者より協力をいただいた。この場を借りて御礼申し上げます。

(5) 国立環境研究所 塩竈 秀夫 地球システム領域 地球システムリスク解析研究室 室長
東京大学大気海洋研究所 渡部 雅浩 教授
(6) 京都大学防災研究所 渡部 哲史 特定准教授
(7) 京都大学防災研究所 森 信人 教授

※五十音順、 敬称略。所属・役職は2022年12月1日現在。

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【気候変動に関する懇談会委員】

石川 洋一 海洋研究開発機構 付加価値情報創生部門
地球情報科学技術センター センター長
鬼頭 昭雄 元気象庁気象研究所 気候研究部 部長
木本 昌秀 国立環境研究所 理事長
小池 俊雄 土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター センター長
三枝 信子 国立環境研究所 地球システム領域 領域長
高橋 潔 国立環境研究所 社会システム領域 副領域長
竹村 俊彦 九州大学 応用力学研究所 教授
中北 英一 京都大学 防災研究所 所長/教授
◎花輪 公雄 東北大学 名誉教授/山形大学 理事・副学長
保坂 直紀 サイエンスライター/東京大学 大学院新領域創成科学研究科 特任教授
山﨑 登 国士舘大学 防災・救急救助総合研究所 教授

(◎…会長)
※五十音順、 敬称略。所属・役職は2022年12月1日現在。

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【本解説書第1章からの引用等について】

 本解説書第1章の文章及び図表については、別の資料からの引用であるものを除き、出典を明記した上で、また編集・加工等を行った場合はその旨を明記した上で、自由に複製、公衆送信、翻訳・変形等を行うことができる。別の資料からの引用であるものについては、それぞれの資料で使用条件等を確認の上、利用者の責任で必要に応じて別途許諾を申請・取得されたい。
 参考のため、本解説書中の図表のうち第三者が著作権を有するものについて、図表番号・タイトル、本解説書における掲載ページ及び出典を以下に示す。

図表番号 タイトル 出典
図3.2 150年連続実験における、日本の陸上で平均した地上気温10年移動平均の1950-1979年平均からの偏差 Mizuta et al.(2022)
図4.1 東京大手町の旧気象庁本庁庁舎における、時間降水量のパワースペクトラム Takayabu and Hibino (2016)
図4.3 250m解像度モデルによるメソスケール対流系(MCS)の主要な構成要素 Prein et al.(2021)
図4.4 MCSの1例における (a-g) 様々な格子モデルにおける時間降水量パターンと、MCSの(h) 軌道、(i) 最大降水量、(j) 移動速度、(k) 対流性降水量平均値、(l) 層状性降水量平均値、(m) 250m版との形状の差異 Prein et al.(2021)
図4.5 MCSの1例の、水平解像度 (a) 12km、(b) 4km、(c) 250m のモデルによりシミュレートされた姿 Prein et al.(2021)
図4.6 2020年の梅雨前線上の強雨の再現実験結果の解像度依存性 Fukui and Miura(2021)
図4.7 積雲対流スキームを用いないNHRCMにより再現された積雲対流の平均的な構造 Fukui and Miura(2021)
図4.8 NHRCMの(左)5kmモデルと(右)2kmモデルの時間降水量のsnap shot 森元(2018)
図7.1 年最大時間流量の非超過確率プロット 立川ほか(2017)
図7.2 淀川氾濫の経済的被害の超過確率 Tanaka et al.(2018)
図7.3 台風による極端な波の高さの将来変化 Shimura et al.(2017)
図7.4 平均波高の将来予測の不確実性 Morim et al.(2019)
図7.5 d4PDF等をもとにした水門設計条件 大阪府河川構造物等審議会資料(2020)
図8.1 全球モデルMRI-AGCM3.2とCMIP5/6マルチモデルアンサンブルとの比較対象とした領域 Ito et al.(2020b)

出典の記載例

① そのまま利用する場合

  • 出典:文部科学省及び気象庁「気候予測データセット2022 解説書」
  • 文部科学省及び気象庁「気候予測データセット2022 解説書」より引用
  • 本解説書中の文章(文部科学省及び気象庁「気候予測データセット2022 解説書」)
  • 図表タイトル(文部科学省及び気象庁「気候予測データセット2022 解説書」)

② 編集・加工して利用する場合

  • 文部科学省及び気象庁「気候予測データセット2022 解説書」をもとに○○株式会社作成
  • 図表タイトル(文部科学省及び気象庁「気候予測データセット2022 解説書」)に加筆

※ 本解説書中の文章及び図表を編集・加工した場合、
それをあたかも文部科学省及び気象庁が作成したかのような様態で公表・利用することは固く禁止する。

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