MANUAL

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はじめに

 近年、国内外で極端な気象や災害等が多発しており、今後さらに気候変動に伴ってより激甚化、頻発化することが懸念されている。2021年8月に公開された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書第1作業部会報告書では、地球温暖化について、人間活動の影響があることに疑う余地がないと結論付けられ、同年11月に行われた国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第26回締約国会議(COP26)では、2016年に発効されたパリ協定の1.5℃努力目標達成に向けて、各国に対してより野心的な気候変動対策を求める内容が盛り込まれるなど、ますます世界各国が協力して気候変動対策を加速していくことが求められている。
 こうした中で我が国では、2018年に気候変動適応法が施行され、同法に基づく気候変動適応計画が閣議決定(2021年に改定)されるなど、国、地方公共団体、事業者、国民が連携・協力して気候変動適応策を推進するための枠組みが整備された。また、気候変動の緩和の観点では、2021年に地球温暖化対策推進法が改正され、2020年10月に宣言された「2050年カーボンニュートラル」を基本理念として法に位置づけ、我が国として総力を挙げて地球温暖化対策を推進していくことを内外に示している。国において、これらの気候変動対策に関する様々な動きが進むほか、地方公共団体や民間企業等においても、気候変動対策の具体的な検討・実施が進められている。地方公共団体では地域気候変動適応センターの設置や地域気候変動適応計画の策定、それを踏まえた対策の実施等が進むほか、民間企業においては、環境等に配慮した投資(ESG投資)の拡大を受けて、自社の気候関連リスク等を分析し、財務情報等で開示する取組(気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD))が活発化している。
 これらの様々な分野における気候変動対策を進めるうえで、気候変動の現状及び将来予測に関する情報が極めて重要である。このため文部科学省及び気象庁では、我が国としての気候変動の現状及び将来予測について、種々の科学的知見を取りまとめ、分かりやすい形で提供すること等を通じ、現在、進捗しつつある気候変動対策の取組を関係機関とともに積極的に支援するため、2018年より「気候変動に関する懇談会」を開催している。本懇談会での議論を通じて、文部科学省及び気象庁は、我が国における気候変動対策がより促進されるよう、文部科学省等をはじめとする国内の気候変動研究プログラム等において作成された気候変動予測データを取りまとめた「気候予測データセット2022」を公表するとともに、当該データセットの内容、利用上の注意点等をまとめた気候予測データセット2022解説書を作成することとした。

 本解説書の構成は次のとおりである。
  第1章「気候予測データセット2022に関連する全般的事項」では、気候予測データセット2022の概要について説明している。気候予測データは不確実性をはじめとした利用にあたっての様々な注意点がある。そのため、ここでは、全般的な注意点のほか、ダウンスケーリング手法・モデル解像度・社会経済シナリオ等、詳細な解説を記載している。また、代表的なバイアス補正手法やデータセットの利用例、一部データの比較結果についても紹介する。
  第2章「各データセットの解説」では、気候予測データセット2022を構成する15のデータセットについて、使用したモデルや利用上の留意事項等の詳細な解説を記載している。

 最後に、本解説書とあわせて「気候予測データセット2022」が、気候変動の影響評価研究者や地方公共団体、民間企業等の様々な分野で気候変動対策に大いに利活用されることを期待する。

令和4年12月

  • 第1章気候予測データセット2022に関連する全般的事項

    第1章では、気候予測データセット2022の概要等について説明しています。

    解説ページはこちら

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  • 第2章各データセットの解説

    第2章では、気候予測データセット2022を構成する15のデータセットについて、使用したモデルや利用上の留意事項等の詳細な解説を記載しています。

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